東京都新宿区の校正・校閲会社、円水社(えんすいしゃ)のブログ

  • 2018年04月18日(水)
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「閉月羞花」(へいげつしゅうか) 

 今年も4月にテレビ各局に入社した美人アナが話題になっています。ミス日本やモデルや乃木坂46やAKB48や気象キャスターですでに人気の人も新人アナとして入社。局別女子アナカレンダー・人気ランキングまで用意されて。競争率1000倍とか。
 さて古今の美人を表現するにはこの「閉月羞花」(王実甫『西廂記「第一本第四折」』など)と「沈魚落雁」(『水滸伝「三二回」』など)が知られます。絶世の美人をみて、月は雲に隠れ、花は恥じいってしぼみ、魚は泳ぐのを止めて沈み、雁は飛ぶのを忘れて落ちてしまうというのです。中国の四大美人はご存じのように西施(春秋時代。芭蕉に「象潟や雨に西施がねぶの花」がある)、虞美人(秦末)、王昭君(前漢)、楊貴妃(唐)。貂蝉(後漢末)を加えて王昭君を除く場合もあるようです。腋臭だったとか、足が大きかったとか、片方の肩が釣り合わなかったとか、口さがない陰の声があるようです。みんな避けてしまったのですから、評価は男性文筆家の美文によるしかないのでしょう。
 

  • 2018年04月11日(水)
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「一衣帯水」 (いちいたいすい) 

「日中平和友好条約締結40周年」のささやかな記念として『日中友好文温の絆 四字熟語』を本稿をもとにしてまとめたい。そこになくてはならない一語がこの「一衣帯水」(『南史「陳後主紀」』から)です。一条の帯ほどの水流というので京都の鴨川ほどの帯を思い浮かべる人も多いのですが、実はこの川は対岸が霞んで見えない「長江」なのです。かつて隋の文帝楊堅が、全土統一の兵を率いて長江北岸に達したとき、「あに一衣帯水を限りて之(陳の民)を拯(すく)わざるべけんや」と臣下にいい渡河します。
 海を隔てた日本と中国との交流の場で双方でよく使われます行き来に困難は想定されるけれども展望をもって対処しようという覚悟の表現なのです。「日中両国は、一衣帯水の間にある隣国であり、長い伝統的友好の歴史を有する」(日中共同声明)のです。「いちい・たいすい」と切ると雨にでも濡れて水気を帯びた衣装を着ていることになってしまいますから、「いち・いたいすい」あるいは「いちいたい・すい」と読むこと

 
  • 2018年04月04日(水)
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「噤若寒蝉」 (きんじゃくかんぜん) 

 蝉噪といわれるほどに夏秋を謳歌したセミも秋が深まり寒冷のときを迎えると黙して死に備えます。権力者におびえて真正面から反論して正論を述べることをせず、寒蝉のように口をつぐんで自己保身にもっぱらな官人を「噤若寒蝉」(『後漢書「杜密伝」』から)と呼びます。官界がそうなってしまったとき社会正義の風潮は衰えざるをえません。
 後漢時代の清官であった杜密は、宦官の子弟の違法行為を有罪としたことで故郷の頴川に移されます。同罪で故郷に帰っていた高官の劉勝が「閉門謝客」して世事を聞かず問わずにいることを知った杜密が、鳴かなくなった寒蝉と同じで官人としては社会的罪人であると責めたことから。身近にも実例の存在を感じますし、金正恩独裁政権の北朝鮮には常態としてあると想定されます。歴史上ではすべての官人が「噤若寒蝉」のなかでひとり李陵を擁護して宮刑を受けた司馬遷の例をあげておきましょう。
 政治向きでなく唐突ですが、歌麿の春画のやりとりにも「噤若寒蝉」は必要でしょう。
 

  • 2018年03月28日(水)
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「東山再起」(とうざんさいき)

 一度引退した人が再び元の地位に戻って活躍することを「東山再起」(『晋書「謝安伝」』から)といいます。東晋時代の著名文人で名族陽夏謝氏の出であった謝安は、若い頃は著作郎として国史の編纂に従った程度で束縛されるのを嫌い、職を辞して浙江省会稽の東山に隠居して琅邪王氏の王羲之らと清談にすごしました。40歳になって仕官して以後、淝水の戦いに成功するなど東晋の安定に寄与しました。そのことから「東山再起」は再起する、巻き返すといった意味で広く用いられています。
 政治的に知られるのは小平の「東山再起」で、文革で3度も失脚しましたが、改革開放に成功しました。いま企業の「東山再起」といえば韓国楽天(ロッテ)それに索尼(ソニー)でしょうか。スポーツならアメリカのメジャーリーグで故障やスランプから復活した選手に「東山再起球員奨」(カムバック賞)が与えられています。そして文化なら宮崎駿監督が引退声明以来になる『毛虫のボロ』を3月公開、「東山再起」がいわれます。
 
  • 2018年03月21日(水)
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「五湖四海」(ごこしかい)

 日本ではふつうに使われているけれど中国では難しいとされる四字熟語20項を『人民網』が取り上げています。全国各地をいう「津津浦浦」は海に囲まれている日本でこその言い方で、中国では「五湖四海」(唐・呂岩「絶句」)といいます。五湖は一般的には洞庭湖、鄱陽湖、太湖、巣湖、洪沢湖で、四海は東海、南海、黄海、渤海を指します。『論語「顔渕」』には「四海之内、皆兄弟也」とあります。また「岡(傍)目八目」(当事者は迷、傍観者は清)や「一言居士」(仏教にちなむ)は中国では難しい事情がわかります。
「切磋琢磨」(『詩経「衞風・淇奥」』から)は衞の武公が生涯精進を怠らなかったことを骨・象(牙)・玉・石を加工する切磋琢磨に託したことから。いま青少年の教育や「工匠精神」が叫ばれており日中で同程度の用いられ方と推察されます。「魑魅魍魎」「臥薪嘗胆」「乾坤一擲」「切歯扼腕」などはわが国ではパソコンでも一発で出ますからよく用いられるうち。カナのない中国では書けない成語として忌避されてきたのでしょう。

 

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堀内正範氏

日本丈人の会 代表
Web月刊「丈風」編集人

当社が永く校正で携わった、『知恵蔵』(朝日新聞社)の元編集長、朝日新聞社社友。
現在は「日本長寿社会」を推進する「日本丈人の会」を主宰し、アクティブ・シニアを応援している。 中国研究を基にした四字熟語への造詣も深く、時事を切り口に、新聞や書籍において解説を行なっている。
日本丈人の会ホームページにて、「現代シニア用語事典」も掲載。

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