東京都新宿区の校正・校閲会社、円水社(えんすいしゃ)のブログ

  • 2019年02月20日(水)
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「遊手好閑」(ゆうしゅこうかん)

 近ごろのテレビ番組にお笑いや料理・食べ歩きが多いことに気づきます。手を遊ばせて生産的なしごとから離れて安逸にすごすことが「遊手好閑」(『紅楼夢「六五回」』など)です。用いるのは口ばかり。口の用はしゃべることとたべること。それを見て一日を「遊手好閑」にすごすのは褒めたことではないようです、年季のはいった技術を巧みに使いこなす器用な人をいう「手八丁」は褒めことばで、「口八丁手八丁」となるとけなしの意味合いが強まるのですが、ここから先のことわざ探索は本項の手に余ります。
 原稿を見ながら手を休(閑)めずに鉛字を拾う「検字」(植字)は、停電でも「盲検」ができる神業として最高の「手芸」であり、「手芸人」として尊敬を受けてきました。が、電脳(コンピューター)の出現で一夜にして鉛字が廃れてしまい、「用武之地」を失った技術者は少年でもできる電脳検字に関われず、複雑な思いで「遊手好閑」の日々を受け入れています。あれこれと労苦して身につける「手芸」の伝承が失われていきます。
 

  • 2019年02月13日(水)
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「冬日暖陽」(とうじつだんよう)

 晩年を自在に過ごした唐の白居易は、その「自在」詩に「杲杲(こうこう)冬日光 明暖真可愛」と初句に述べて、ながいすを陽のあたるところに移して日だまりで一人語りをしています。が、「冬日之陽」は長く君王の人民に対する恩恵として専用されてきたために、自然のぬくもりを失っていました。解放された「冬日之陽」は、春節のころから本格的な「春暖花香」の訪れまでをつなぐ「冬日暖陽」で語られるようになっています。 
 春節を迎えて郷里に帰る人びとを輸送する春運をスムーズにするために、中国標準規格の高速鉄道復興号が各地でフル運転されていますが、広州市では「冬日暖陽、花城有愛」をかかげて、志願の若者たちが駅の整理に当たっています。同じころ南方の昆明では「冬日暖陽」の日々がつづいて、菜の花をはじめ月季(中国バラ)や冬桜花や万寿菊などの花々が咲きそろい、艶を争う「冬日春景」を現出しています。しかし北方ではまだ「春回大地」には遠く、「冬日暖陽」を求める日々がつづくのです。
 

  • 2019年02月06日(水)
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「春満人間」(しゅんまんじんかん)

「春満人間」(曽恐『元豊類稿「班春亭」』など)は、生き生きとした春の気配が人びとの間に満ち溢れるようす。春の気が足りないうちは、「筆下春風」や「筆頭生花」や「筆底春風」でもりたてます。そうこうするうちに「春暖花香」の季節がやってくるのです。

 今年の「春節」は2月5日で立春の翌日になりました。ですから3日の節分に恵方巻を食べ、4日の立春(除夕)には年夜飯を食べて「春晩」(CCTV春節聯歓晩会)を見て、餃子を食べて祝った国際派の人もいたでしょう。「亥(猪・ブタ)年」の春節に食品ロスの恵方巻を飼料としてたっぷり満喫した「春満猪間」の日本ブタたちもいたことでしょう。

「春節」は農暦の正月初一ですが、なお大気は春めいてはおりません。新月で月影はなく星明かりだけの夜をすごして、農民は新しい年に豊作を祈り、無病息災を祈り、家族そろって「吉祥如意」をねがってきたのです。七連休を利用し海外旅行に出る人も多く日本各地は人気スポットです。景気減速で消費に変化がみられるようですが。

  • 2019年01月30日(水)
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「五味倶全」(ごみぐぜん)

 農暦の除夕(大晦日、今年は2月4日)の「年夜飯」(日本のおせち)の食材・料理の宣伝に「五味倶全」のキャッチは欠かせません。「五味」はご存じ酸(すっぱい)甜(あまい)苦(にがい)辣(からい)鹹(しおからい)で、すでに『礼記「礼運」』に「五味六和」として表れます。五味ともにそろう「五味倶全」(『関漢卿『竇娥冤「第二折」』など)は調理が五味の特徴を活かしていることに。山東料理は鹹、四川料理は辣、上海料理は甜といった地方色も生きています。中医では偏らない摂取が健康の元としています。
 五味の多様な味わいから「五味倶全」や「人生五味」は本やTVドラマのタイトル、お酒の銘柄、相声(伝統話芸、漫才)の演しものとしてもよく知られています。わが国にはこんな「五味俱全」もあります。五人そろわないと「嵐」じゃないと20年つづいた男性アイドル・グループ「嵐」が活動休止を発表し、30代の女性フアンが騒いでいるようですが、「盛筵(宴)必散」もまた「人生五味」のうちなのです。

 

 

  • 2019年01月23日(水)
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「揚眉吐気」(ようびとき)

 眉を揚げて気を吐くという「揚眉吐気」(李白「与韓荊州書」など)は、抑圧状態(忍気呑声)から解放されたあとの壮快で気分が昂った状態をいいます。テニス豪州オープンで大接戦に耐えてクビトバ選手に勝利した大坂なおみ選手が試合中に喜びを爆発させた表情は「揚眉吐気」そのものでした。若き日の李白が妻子を得て安陸にいたころ、荊州長史だった韓朝宗に送った自己推薦の手紙に白揚眉吐氣,激昂青雲」と抱負の大きさを誇って記しています。こういう解放状態は現代中国のあちこちに見られるので、李白の解放感と重ねて用いられています。

 国連の分担金(2019〜21年)では、中国が12.01%に増えて日本の8.56%との差がはっきりしたことで、国際的地位の上昇として「揚眉吐気」がいわれます。月面探査機、原子力潜水艦、国産車SUVの開発などでも。ただしサッカーのアジアカップではまずは1次リーグ突破で16強を目標にしてやれやれといった「揚眉吐気」でしたが。

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堀内正範氏

日本丈風の会 代表
Web月刊「丈風」編集人

当社が永く校正で携わった、『知恵蔵』(朝日新聞社)の元編集長、朝日新聞社社友。
現在は「日本長寿社会」を推進する「日本丈風の会」を主宰し、アクティブ・シニアを応援している。 中国研究を基にした四字熟語への造詣も深く、時事を切り口に、新聞や書籍において解説を行なっている。
日本丈風の会ホームページにて、「現代シニア用語事典」も掲載。

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