東京都新宿区の校正・校閲会社、円水社(えんすいしゃ)のブログ

  • 2020年09月30日(水)
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「密密麻麻」(みつみつまま)

「密閉」「密集」「密接」という「三密(三つの密)」がコロナ感染の拡大防止の標語としていわれて、「クラスターI(集団感染)」の防止に大いに成果がありました。厚労省や内閣府で用いられて広がった日本オリジナルの用語で、日本方式として国際的にも評価されています。中国語版では「三密(密閉空間密集場所密切接触場面)」とし、英語版では「Three Cs」に。「ソーシャル・ディスタンス」として親しくなりました。
 人や物がびっしりと切れ目なく連なるようすを「密密麻麻」(『西遊記』・巴金『家「二十」』など)として多様につかいます。『西遊記』では人群れに、巴金は銃声に。アメリカではワシントン記念碑付近の広場に、コロナ死者20万人を悼んで2万本の小型の国旗が「密密麻麻」として立てられました。またニューヨーク・フランクリン博物館前では警察官による黒人殺害に抗議する「密密麻麻」の大集会が開かれています。アメリカ社会と経済の混乱は遠からず横流となってわが国を襲うことになります。

  • 2020年09月23日(水)
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「民不堪命」(みんふたんめい)

「民」のつく四字熟語であってほしいのは「民安国泰」でしょうか。戦争がなく「戴白の老も干戈を睹(み)ず」という長い平和を保ってきたこの国に、突如、戦禍ではなく菌禍が襲来して、「安土楽業」が危うい日々がなお長くつづく気配です。

 コロナ襲来で国民は49日間の緊急事態の自粛に堪えぬいて「第一波」の収束に勝利したと思いきや、「with コロナ」という持久戦となり、とくに都民「痛みに堪える」日々をつづけています。政府はコロナ対策と経済の「両面構想」を示せないまま感染の結果を個人に負わせるGoToキャンペーン政策強行しました。立ち寄り先でだれかがその結果を負うことになり、原因は移動した都民ということになります。

 民衆が為政者の負担に堪えられず暮らしていけない「民堪命」(『春秋左氏伝「桓公二年」』など)がわが身に起こっているのです。入場制限をやめた球場に子どもたちの笑顔と歓声がもどりましたが、束の間の解放感でなければいいのですが。

  • 2020年09月16日(水)
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「歌舞昇平」(かぶしょうへい)

 歌舞が盛時にむかう太平(昇平)の時代を表現することが「歌舞昇平」曾鞏『元豊類藁「六」』などです。民衆の歌と踊りの開放は平和と自由の証しです。

 いま人類の敵「コロナウイルス(冠状病毒)」との世界戦のさなか、犠牲者は100万人に達しようとしています。まだ収束の兆しが見えず、感染源の除去のためには「コーラス」も「ダンス」も控えねばなりません。本来なら大聴衆を盛り上げてコロナとの闘いを鼓舞するはずの大規模ライブイベントも中止を余儀なくされて。
 ただし現代の中国では「慶祝太平」ではなく「粉飾太平」の意味合いで用いられています。褒めことばが時代の推移のなかで逆に貶す意味をもつことがあります。郭沫若に現代の屈原と評された革命期の詩人柳亜子(慰高)の詩にも処々の「歌舞昇平」は「民族の恥」とあり、不夜上海がかつての「民族の恥」になることへの警鐘なのでしょう、歌舞が民衆から離れない日本とは異なる用い方の例といえるでしょう。

  • 2020年09月09日(水)
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「青出于藍」(せいしゅつうらん)

「青は藍より出でて藍より青し」はよく知られた成句です。「出藍」と略されて用いられています。藍を染料として染め上げた布がいっそう深く鮮やかな青色(正色)を呈することからで、だれもが美しい藍染めの実物をたいせつにして実感しています。
『荀子「勧学」』には「青取之于藍、而青于藍。冰(こおり)水為之、而寒于水」とあって「青藍冰水」と合わせて用いられてきましたが、のち「青出于藍」「冰寒于水」とそれぞれ単独に。「青出于藍」はとくに学生が老師を超えて優れた人物に育つことに、また後人が前人を超えて勝れた業績を残すことに期待がこめられています。新しい時代はそうした人びとのたゆまぬ努力が重ねられて進展してきたのです。
 近頃はどうでしょう。若者(成長力)と女性(多様性)は実力が追いつかないままに遇され若い女性はそれだけで際立っています。一方で「世代交代」を進めた政界では、「国難」に応ずる政策決定に先人(長老)から意見を聞くこともなくなりました。

  • 2020年09月02日(水)
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「吉人天相」(きつじんてんしょう)

 新世紀はじめの政界にトルネード(竜巻)のような「世代交代」があって「7年7相」期があって、そのあと安倍政権は7年8か月の長期にわたりました。デフレ脱却のアベノミクスでは若者の「成長力」と女性の「多様性」に期待したために若い女性がとくに際立つ世相を現出しました。逆に高齢の男性は恩恵にあずかれませんでした。
 この「吉人」は生まれながらに福気のある人、善良な人。「天相」は善をなす人を天が助けてくれること。善良な人は必ず天が助けてくれるという迷信にも近い言いならわしで、病気や不幸な目にあった人をなぐさめることばになります。すでに『春秋左氏伝「宣公三年」』に表れる長く生ききながらえている吉祥の古語のひとつです。
テレビ取材で盛夏の日射にも輝く人生の成果である「吉人天相」の老人に出会います。農民として生涯一筋の人はしわまで善良な生活感にあふれています。一方の若い女性記者には生活感がなくて。誉めことばとして「吉人天相」がそこにあります

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堀内正範氏

日本丈風の会 代表
Web月刊「丈風」編集人

当社が永く校正で携わった、『知恵蔵』(朝日新聞社)の元編集長、朝日新聞社社友。
現在は「日本長寿社会」を推進する「日本丈風の会」を主宰し、アクティブ・シニアを応援している。 中国研究を基にした四字熟語への造詣も深く、時事を切り口に、新聞や書籍において解説を行なっている。
日本丈風の会ホームページにて、「現代シニア用語事典」も掲載。

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