- 2024年03月27日(水)
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「痴人説夢」(ちじんせつむ)
春の夢は痕跡をとどめずに消え去る「春夢無痕」ですし、好い夢も現実にはなら
ない「好夢難成」のようです。が、痴人が説く夢である「痴人説夢」(『封神演
義「五三回」』など)」は、時代の潮流となって一世を風靡するもののようです。
唐代の故事ですが、「何」出身の僧伽は修行で周遊のとき、お名前は何?と聞かれて「姓
何」と答え、お国は何国?と聞かれて「何国」と答えて痴人とされました。去世したあと碑
文に「大師姓何、何国人」と刻まれたのを見て、後人は「痴人説夢」の典型としたのでした。
「痴人の前に夢を説く」(朱熹)というのは、愚昧な者に夢の話をする益のないたとえに。
現代も実情に合わない荒唐な話として強調する場面で用いられています。本邦のタイトル
「バカ本」の流行は、著者か版元かあるいは読者が「痴人説夢」指向なのでしょう。新世
紀20年余つづいた世代交代、若者化・“愛痴”化(バカ化)によって展開された時代変
革は、政治と経済の国際的な埋没とともに「痴人説夢」の事例を併発させているのです。