- 2018年10月10日(水)
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「雨霖鈴曲」(うりんれいきょく)
「王朝の女人・楊貴妃」を演じて、華麗・艶麗な唐王朝の女性を体現してみせた美人女優范(範)冰冰(ファン・ビンビン)が146億円という多額の脱税を指摘されて、当局から女優として“死を賜う”ことになりました。安史の乱で玄宗皇帝とともに長安を追われて蜀の地に逃がれる途中、馬嵬で一族とともに殺害されたとき、楊貴妃は37歳。奇しくもいま范冰冰は37歳。玄宗に死を賜って縊死した楊貴妃と同年齢なのです。
楊貴妃にかんする四字熟語には「明眸皓歯」(杜甫「哀江頭」)や「一笑百媚」(白居易「長恨歌」)「解語之花」(開元天宝遺事)などがありますが、この「雨霖鈴曲」(明皇雑録補遺)は楊貴妃に死を賜ったあと、斜谷で長雨と馬の鈴の音の響きに亡き愛妃を思って玄宗がつくった楽曲の名です。玄宗には琴をつま弾く楊玉環の姿が見えていたでしょう。広く妻や女性をしのぶ曲にいいます。「寒蝉凄切」ではじまる宋の柳永の「雨霖鈴」詞には、相愛の「佳人」との別れの深い悲傷が覊旅の風景の中に詠いこまれています。