- 2020年07月01日(水)
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「折腰五斗」(せつようごと)
五斗のために腰を折る「折腰五斗」(『晋書「陶潜伝」』から)は、年に5斗(今の5升)というわずかな俸禄を得るため汚吏貪官や若造の屈辱を忍ぶこと。それには耐えられぬと職を辞して郷里に帰ったのが陶潜(字は淵明)です。その事績はのちの唐(孟浩然)や宋(辛棄疾)になって広く知られて「折腰五斗」がいわれるようになりました。有名な「帰去来の辞」の「帰りなんいざ、田園まさに蕪れなんとす」は菅原道真以来の訓読。故郷の潯陽で20年をすごして、里人に靖節の人五柳先生と慕われて生を終えています。
大正から昭和の初めに中国大陸で生まれて育った高齢の方々が亡くなっていきます。蕪れた戦禍のちまたに戻って、「三密」のなかで身を寄せ合い助け合って貯蓄などせず、「一億総中流」社会をこしらえた功労者の方々です。ですから「老後破産」といわれ「下流老人」と呼ばれても「国のお世話」(生活保護)をいさぎよしとせず、大陸の荒野で捨てられまた都会の片隅で無視されても自足の人生を送って去る人びとです。