東京都新宿区の校正・校閲会社、円水社(えんすいしゃ)のブログ

「文不加点」 (ぶんふかてん)

 もっとも優れた文章が一気呵成に記されていることが「文不加点」(祢衡『鸚鵡賦「序」』など)です。それは文思にも修改の要のないことを示しています。至宝とされている書の名品の筆づかいは、どれもがそういうきびしい姿をしています。

王羲之(「羲之頓首」ではじまる「喪乱帖」)や王献之のもの、唐に渡った空海(書状の「風信帖」)や伝橘逸成のもの。顔真卿が心を鎮めて一行にしたためた「嗚呼哀哉」(ああ哀しいかな。「祭姪文稿」)は、文字は人なり(文如其人)の極みを教えてくれます。「顔体」は職人を通じて明朝体に採り入れられているといいます。

印刷されても原稿の一気呵成ぶりはおよそ理解できます。三島由紀夫や丹羽文雄が有名で、一方に大江健三郎の原稿は一字一字ていねいに記して、途中での修正は後ろに添えたり張ったりして繕って、欄外に吹き出しをつくらないようですから「文不加行」。一気呵成とは異質の幅と含みのある文体をつくっています。

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堀内正範氏

日本丈風の会 代表
Web月刊「丈風」編集人

当社が永く校正で携わった、『知恵蔵』(朝日新聞社)の元編集長、朝日新聞社社友。
現在は「日本長寿社会」を推進する「日本丈風の会」を主宰し、アクティブ・シニアを応援している。 中国研究を基にした四字熟語への造詣も深く、時事を切り口に、新聞や書籍において解説を行なっている。
日本丈風の会ホームページにて、「現代シニア用語事典」も掲載。

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