東京都新宿区の校正・校閲会社、円水社(えんすいしゃ)のブログ

「一琴一鶴」(いちきんいちかく)

 古琴を収めた布袋と白鶴を放した竹簍を馬の背の両辺に荷駄として積んで、宋代の趙抃(ちょうべん)は、任地の蜀(成都)へ向かったそうです。任地へ帯同したのが琴と鶴だけ。それが行装のすべてというのは、いささか際立ちすぎます。
 古来、ふたつとも文人の高雅不俗のシンボルとはいえ、趙抃の「一琴一鶴」(沈括
『夢渓筆談「巻九」』など)は噂になり、神宗の耳にも入りましたが、帝は叛意の行為とせず、上任の「行装簡少」のすがたを賛賞した上で「精兵に奪い取りにいかせよう」と伝えたといいます。趙抃の剛直ぶりは「鉄面御史」と呼ばれたことで知られます。
 竹林七賢のひとりで、執行の日に秘曲「広陵散」を弾き終えて刑場に臨んだという琴の名手嵆康と「鶏群一鶴」といわれた子の嵆紹の親子の姿が趙抃の行装と重なるのは思い入れの類でしょうか。趙抃の「一琴一鶴」が有名で、「為官清廉」が含意になりましたが、先立つ唐代には官に付かず隠遁した意味合いで用いられていたようです。


 
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堀内正範氏

日本丈風の会 代表
Web月刊「丈風」編集人

当社が永く校正で携わった、『知恵蔵』(朝日新聞社)の元編集長、朝日新聞社社友。
現在は「日本長寿社会」を推進する「日本丈風の会」を主宰し、アクティブ・シニアを応援している。 中国研究を基にした四字熟語への造詣も深く、時事を切り口に、新聞や書籍において解説を行なっている。
日本丈風の会ホームページにて、「現代シニア用語事典」も掲載。

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