東京都新宿区の校正・校閲会社、円水社(えんすいしゃ)のブログ

「一字之師」(いちじのし)

 晩唐の詩人鄭谷が袁州府にいたころのこと、僧の斉己が自作の詩を携えて訪れます。「早梅詩」というタイトルで、「前村深雪裡 昨夜数枝開」とあります。見て鄭谷は「数枝では早とはいえない。一枝がいい」といいます。斉己は覚えず拝して身を投げ、これよりみなが鄭谷を「一字之師」(『海録砕事「師授門」』など)と呼びました。それ以後、「一字之師」は数多く記録されることになります。
 それ以前にもあって、有名なのが「推敲」の故事でしょう。中唐の苦吟詩人賈島が科挙でやってきた長安の街中で、「鳥宿池辺樹 僧推月下門」の句を得たあと「推す」だけでなく「敲く」にも気づきます。が、いずれかに決められない。と、ロバが大官の列にぶつかって、つれていかれたのが韓愈の前でした。賈島は「推・敲」の悩みを述べ、聞いて韓愈は「がよい」と答えて「一字之師」となったのでした。この方が故事成語にふさわしいのですが、いわれは動かせません。

 

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堀内正範氏

日本丈風の会 代表
Web月刊「丈風」編集人

当社が永く校正で携わった、『知恵蔵』(朝日新聞社)の元編集長、朝日新聞社社友。
現在は「日本長寿社会」を推進する「日本丈風の会」を主宰し、アクティブ・シニアを応援している。 中国研究を基にした四字熟語への造詣も深く、時事を切り口に、新聞や書籍において解説を行なっている。
日本丈風の会ホームページにて、「現代シニア用語事典」も掲載。

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