東京都新宿区の校正・校閲会社、円水社(えんすいしゃ)のブログ

「黒白混淆」(こくびゃくこんこう)

「黒白混淆」といえば何やらアメリカ社会の課題と思われそうですが、じつは大国の再興「中国の夢」も、この課題の克服なしにはありえないといわれています。

ことは後漢時代の楊震にはじまります。楊震は、30年間教育にたずさわって門下生3000人、「関西孔子」と称えられました。その後の出仕は20年余り。東莱太守のとき通りかかった昌邑で、県令の王密から深夜ひそかに金10斤を贈られます。楊震は「天知る、神知る、我知る、子(あなた)知る、なんぞ知るなしといわんや」と断りました。それが知られて「四知先生」と呼ばれることになります。はては高官たちの目にあまる豪邸、園林づくりに、「是非をわきまえず、黒白混淆(『後漢書「楊震伝」』から)と強く諫めて地位を追われ、毒をあおって憤死したといいます。

「改革の全面深化」を掲げる全人代活動報告は、深化する腐敗打破のむずかしさをにじませています。強化しすぎれば「口是心非」という心理的腐敗を引き起こすからです。

  • 2014年03月19日(水)
  • 自然

「九十春光」(くじゅうしゅんこう)

 ことしは大寒気団が何度も南下してきて、大雪が降っては積もって、春のおとずれが遅いようですが、春季、三カ月、九十日の暖かく心地よい光に包まれた期間に繰り広げられる情景を、「九十春光」(陳陶「春帰去」など)というようです。

「冬山如睡」の九十日から「春山如笑」の九十日への移ろいのときであり、目にやさしくて肌につややかなことから「春光明媚」ともいわれます。あるいは風のやわらかな感触から「春風和気」とも、さらには次々に開花のときを迎えて「春暖花香」ともいわれます。生けるものすべてがそれぞれに、待っていた九十日の春光を謳歌します。その中で人もまた季節感に鈍感になったとはいえ、「春満人間(じんかん)」のときを迎えて、人びととの新たな経歴を刻むことになります。こんな「九十春光」もあります。九十歳に達した慕わしい老師を、白髪になった学生たちが囲んで点々滴々のお礼を述べてお祝いをし、「春華秋実」の百寿に至るのを励まそうというのです。

「刮骨療毒」(かっこつりょうどく)

 さすが「故事成語」の国、習近平主席もよく四字熟語を用いて講話に風格を添えています。国家のリーダーが自国の先人の事績を引いて自説の糧とすることはどこも同じですが、この「刮骨療毒」(『三国志「蜀書・関羽伝」』から)は、腐敗が「骨をけずる」ほどに深く、根本的な治療が求められるという深刻な認識をもって行動しようと、「反腐敗」を呼びかけての引用です。開会中の全人代(国会に相当)では、公務員の汚職などでの立件が8%増えて5万1300人余だったことを、「反腐敗運動」の実績としています。大戦後のわが国の官吏が、国・地方を問わず、いかに公僕として「国土の均衡ある発展」に尽くしてきたかを知ることになります。

ここでの先人は、国民的ヒーロー三国時代の蜀の英傑関羽です。関羽の左腕にささった毒矢の毒が骨に及んだため、医師は臂を破り骨を刮り毒を取り去ったといいます。その間、仲間と談笑していた関羽の豪胆さにも学ぼうというわけです。

  • 2014年03月05日(水)
  • 植物

「桃李不言」 (とうりふげん)

 桃も李も、ものを言わない。けれども花が咲き実がなれば、樹下には人びとが訪れておのずから小径ができる。司馬遷は、『史記「李将軍列伝賛」』で、将軍の李広が鄙びた風姿のままで、また能弁でもなかったのに、何事にも誠実に尽くして親しまれて、その死がみんなに哀悼されたことを「桃李不言、下自成蹊」に託して記しています。品格が優れて着々と実績を積んでいる人のもとには、おのずからみなが慕い寄ってくるものだというのです。安倍晋三少年が通った成蹊学園の建学の精神です。

桃には陶淵明の「桃花源記」に由来する仙境「桃源郷」があります。湖南省常徳市の桃花県がモデルとされて観光地になっています。日本の「桃源郷」といえば山梨県笛吹市でしょう。笛吹川の扇状地に日本一を誇る「桃の里」が広がっていて、春先の桃畑は「ピンクの絨毯」となって温和な季節を彩ります。パノラマ「笛吹市桃源郷春まつり」は3月21日(祝)から4月27日(日)までです。

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堀内正範氏

日本丈風の会 代表
Web月刊「丈風」編集人

当社が永く校正で携わった、『知恵蔵』(朝日新聞社)の元編集長、朝日新聞社社友。
現在は「日本長寿社会」を推進する「日本丈風の会」を主宰し、アクティブ・シニアを応援している。 中国研究を基にした四字熟語への造詣も深く、時事を切り口に、新聞や書籍において解説を行なっている。
日本丈風の会ホームページにて、「現代シニア用語事典」も掲載。

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