- 2015年01月28日(水)
- ひと・個人(ふるまい)
「一字一泪」(いちじいちれい)
漢字はその成り立ちからいって、一字がそれぞれの意味をもつことから、文中のひとつの文字に感極まってなみだするという「一字一泪」(李贄『焚書「書答」』など)には実感があります。「一言一泪」なら日本語の詩文にもありうるでしょう。
また文章が一字の増減も許さないほど達意で、一字に千金の値打ちがあることを誇示する「一字千金」もあります。秦の呂不韋は『呂氏春秋』を撰して都の咸陽の市門に掲げた時おおいに誇りとし、一字でも増減しうる者があれば千金を与えると豪語しました。「一字千鈞」のほうは重さ(「一言九鼎」は前出)ではなく、魂を揺するほどの詩品の高さをいいます。
また「一字一珠」はすばらしい詩文や歌声の円潤なことにいい、「一字見心」は書き手の思いは一字に読みとることができることにいいます。一字が「千金」「千鈞」「一珠」「見心」「一泪」とくれば、やはり「一字」は「一泪」に極まります。