東京都新宿区の校正・校閲会社、円水社(えんすいしゃ)のブログ

「官官相護」(かんかんそうご)

 官吏同士がお互いにかばい合うことを「官官相護」(馮夢龍『醒世恒言「一三」』など)といいます。良きにつけ悪しきにつけ官が官を助け合うことはあるわけですが、良い方の清廉な官吏同士の用例は少なくて、道理に合った執務が行われる「官清法正」がある程度。一方、かんばしくない方は、法が炉の火のように無情である「官法如炉」や官吏が虎狼のように残暴である「官虎吏狼」など、官吏「官官相護」になることで民衆の造反を呼び起こす事例は歴史上で絶えることがありません。

「刑は大夫に上らず」(『礼記「曲礼上」』)というのは、大夫(高級官僚)は倫理的に鍛えられた素養を持っているので罪を犯すことなどありえないという前提で刑を免れる特権があったのですが、急激な経済成長の陰で表面上の清廉さを保つ「官官相護」が腐敗の温床になっているということで、いまは軍といえども“特区”はないという習近平政権下で、厳格な「反腐敗」告発が各地各界に広がっているようです。

「吉祥如意」(きっしょうじょい)

 春節(ことしは2月19日)の賀詞として「吉祥如意」(張成「造像題字」など)は、「新年快楽」や「恭賀新禧」とともによく用いられています。たくさんの幸いごとが意のままになるようにという思いを込めています。「祥」も「善」も「美」も羊にちなむ文字ですし、『説文解字』には「羊は祥なり」とあって、吉羊は吉祥の意で用いられています。羊(未)年の「吉祥如意」ですから、良いことが多い一年でありますように。内容のいい四字熟語なので、テレビ劇や楽曲の名、料理や会の名などにも多用されています。

有名ホテルが「吉祥如意年夜飯」(日本のおせち)を提供して、離れて暮らしている家族が手狭な自宅ではなくホテルに集まって、NHKの「紅白歌合戦」にあたる「春晩」(CCTVの「春節聯歓晩会」)をみる「除夕」の過ごし方にも人気があるようです。各地放送局の同種の番組が好まれて、視聴率は10%ていどまで落ちていますが。

  • 2015年02月11日(水)
  • 自然

「春華秋実」(しゅんかしゅうじつ)

 春には花が咲き、秋には実が熟れる。「春華秋実」(『顔氏家訓「三巻・勉学」』など)は成長と成熟の経過を示しています。自然にといいますが、いい実にするために植物だって必死に務めているのです。人事にも「春生夏長、秋収冬蔵」がいわれて、司馬遷は『史記「太子公自序」』に天道の四時への順逆の必要を説いています。

学問・芸術・事業のはじめに当たって、必ずやってくる秋での結実は平素からの努力のたまものであることが強調されます。そして成果の秋には、芸術分野では「春華秋実展覧(展演)」がみられ、事業では創設何周年かの「春華秋実」がいわれます。

日中の文化交流でも「一衣帯水」とともによく用いられます。友好都市では明石市が無錫市から友好記念として「春華秋実」旗(2001年の20周年)を贈られています。民間の投資・貿易による秋実はなお先のことで、務めなければ時だけが流れて成果のない「春来秋去」や「春生秋殺」ということになります。



「日復一日」(にちふくいちにち)

 世に皇帝ともなれば、晩年には職務に倦んだり女色に溺れたりするものですが、後漢を興した光武帝劉秀は、「日復一日」(『後漢書「光武帝紀」』から)の勤務を怠ることなく生涯を終えました。「日また一日」はなにげないことばですが、事業をなしとげたあともその継続に意をつくすことにいいます。劉秀は深淵に臨むがごとく(如臨深淵)、薄氷を履むがごとく(如履薄氷)に精細にすごして、皇太子の荘が勤労のすぎるのをみて「優游自寧」を求めたときにも、「これを楽しんでいるのだから疲れはしないのだよ」といって聞きませんでした。

西暦57年2月初めに洛陽で62歳で崩じましたが、その正月に東夷倭奴国王の遣使の奉献を受けて「漢委奴国王」の金印を贈ってねぎらったのが最後の務めとなりました。日中交流の事績が、戦戦兢兢として日また一日を精勤にまっとうした皇帝劉秀の姿とともに残ったのは歴史の幸運でした。

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堀内正範氏

日本丈風の会 代表
Web月刊「丈風」編集人

当社が永く校正で携わった、『知恵蔵』(朝日新聞社)の元編集長、朝日新聞社社友。
現在は「日本長寿社会」を推進する「日本丈風の会」を主宰し、アクティブ・シニアを応援している。 中国研究を基にした四字熟語への造詣も深く、時事を切り口に、新聞や書籍において解説を行なっている。
日本丈風の会ホームページにて、「現代シニア用語事典」も掲載。

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