- 2015年09月30日(水)
- ひと・個人(からだ)
「命若懸糸」(めいじゃくけんし)
かつて大正七年に芥川龍之介が『赤い鳥』創刊号に書いた「蜘蛛の糸」の犍陀多(カンダタ)の姿が思い出されます。上記原典では目乾連(モクケンレン)が地獄から母を救い出そうとするのですが、犍陀多は蜘蛛の糸にすがって地獄をのがれて極楽へたどり着こうと喘ぎます。天国と地獄というのは格差が広がってゆく時代の表現だったのでしょう。そこで「自分だけは」と考えた犍陀多は地獄に落ちていきました。後に自死する芥川がその後の生きづらい時代までを予見していたかは不確かですが。
国会前の集会で出会った若い女性たち。将来、産み育てる子どもたちの労苦を予見するがゆえの行動に共感を覚えました。平和について戦いの現場しか語らなかった男たちに対峙する、産む性としての「命」への感性が息づいていました。