- 2016年06月29日(水)
- ひと・個人(ふるまい)
「走投無路」(そうとうむろ)
いま八方ふさがりの「走投無路」にある首脳といえば、ロシアのプーチン大統領と金正恩首相でしょう。プーチン大統領はシリア国境での衝突やウクライナ問題、石油危機まで内外の難題にせめられていて、その中での安倍訪露は多いに歓迎されたのでした。しかし懸案の北方領土問題は新しい方途でといいながら「無路」のまま。一方の金正恩首相の「走投無路」は、いまさらいうまでもなく行き着くところは中国に救援を求める路しかないといわれます。
手法や手段が本来のものではなかったのに、幸いにも満足すべき結果が得られたときに「歪打正着」(『醒世姻縁伝「二」』など)といいます。結果オーライといったところ。野球でバントすべきところを強振したらホームランになったなどは経験があるでしょう。碁や将棋では「正打歪着」やら「歪打正着」がしきりです。競馬の万馬券は「歪打正着」そのものです。本田圭佑のアシストのボールなどは本人は「正打正着」でしょうが観客には「歪打正着」に見えます。そこが魅力なのでしょう。美人とはいえない年上の奥さまにそういうのは失礼ですが、ほんとです。
史上に残る「歪打正着」では、秦の始皇帝が不老長寿の元として水銀を用いたこと。陵墓にも大量の水銀を使って池を構築したことで、水銀の防腐作用で遺体は腐乱を免れている可能性があるうえ、有毒だったことで盗掘も免れてきたというのです。始皇帝は「歪打正着」の水銀の池に浮いていまも「長生不老の夢」を見ているというのです。
ここの「名」は占有すること。おカネを持っていないこと、一文無しであることを「一文不名」(楊沫『青春之歌「二部・二七章」』など)といいます。『史記「佞幸列伝」』から)には「不得名一銭」とあり、「一銭不名」ともいいます。紛れやすいことばに「一文不値」があります。こちらは値打ちがないということですから、低い地位のことや人を軽くみたりすることに用います。
さて「一文不名」から「資産百万」へのほうでは、『ハリー・ポッター』シリーズを書いたJ・K・ローリング(英)をあげておきましょう。70か国以上に翻訳され、4億5000万冊以上といいますからすごい。逆に「千万富豪」から「一文不名」へでは19歳で起業、女性ジョブスといわれた医療会社「セラノス」のCEOエリザベス・ホームズ(米)でしょうか。注射で採血せず指先からの血液で検査する特許業務の禁止で会社は超1兆円の資産からホームレスに。小保方さんの手法を思わせます。