東京都新宿区の校正・校閲会社、円水社(えんすいしゃ)のブログ

  • 2017年01月25日(水)
  • 自然

「臘尽春回」(ろうじんしゅんかい)

「臘」は臘月で農暦最後の十二月のこと。寒冷な冬の季節が終わって温暖な春の季節がまた回ってくることが「臘尽春回」(孫道絢「菩薩蛮・梅」など)です。春節(ことしは1月28日)の祝いことばのひとつ。梅が咲き初めたり、氷雪が融けだしたり。佳節の訪れを思わせます。「それがなんで好(ハオ)なんですか、ただ浮生に一年を添えるだけじゃないか」(王炎)という声もありますが。

 温暖な春に回ってくれればいいのですが、「臘尽冬残」となるとなお厳しさがつづくことになります。さらには春など訪れずに骨を刺すような「臘寒風」のなかで暮らす人びと。貧困戸を少しでも支援をしようという慰問活動が春節を前に各地各所でおこなわれています。李克強首相は今年は雲南の山奥の貧困な小村をたずねて車座になって村民の話に耳を傾け激励し、お正月用品を届けて回っています。 

 臘梅は寒と闘いつつ花開く屈強な姿が愛でられて歴代の詩人に詠われています。

「鱗次櫛比」(りんじしっぴ)

 さかなの鱗や櫛の歯のように同形のものが整然として次々に並んでいるようすが「鱗次櫛比」(陳貞慧『秋園雑佩「蘭」』など)です。建物やお店や物品などでそういう情景を思い浮かべることができます。古いもの新しいもの、人はそういう人工物の整列した姿に安心感をもつのでしょう。発展をつづける中国では、香港、北京、上海、深圳ばかりでなく、いまや高層ビルが立ち並んでいることが発展の証とばかりに、地方都市はどこも中央部の商業圏では高層化を競い、郊外には同階同色の住宅群が「鱗次櫛比」して出現しています。現代人の安心感が都市の変容のなかに息づいています。
 また古いほうでは、自然に囲まれた村落の伝統的建築群が「歴史文化名村(鎮)」として数多く保全・保護されています。たとえば貴州侗族の大利侗寨は、四周を楠の古木に囲まれて、何百戸かの青瓦木楼が何百年となく河筋や石板古道の両側に「鱗次櫛比」して残されています。「天人合一」といった風情の生活が営まれているようです。
 

「万家灯火」(ばんかとうか)

 夜になってすべての家々に灯が点ることを「万家灯火」(王安石「上元戯呈貢父」など)といいます。城市が繁栄しているようすであり、平和が続いている証であり、その下での穏やかな暮らしが思われます。「日本三大夜景」には長崎・札幌(函館でなく)・神戸(「日本夜景サミット」2015)が選ばれ、「世界三大夜景」にも香港・ナポリとともに函館か長崎かが挙げられています。中国では上海・西安・重慶を称しています。
 民俗行事としては、春節(新月)のあとの望月(十五日)の夜におこなわれる「観灯」で、夜を通して門々に灯を点して過ごします(元宵節)。歳初の満月に皇帝は万人の幸せを祈り、農民は豊作を祈ったのでしょう。唐の玄宗のときの「元宵灯節」が最も豪華で、長安中の燃灯は五万盞を数え、皇帝は広さ20間、高さ150尺の灯楼をつくらせています。白居易の詠う「灯火万家」(「江楼夕望招客」から)は、杭州刺史(長官)時代のもので、杭州の万家の灯と西湖に映る遊船の灯を「星河一道」に対比しています。

  • 2017年01月04日(水)
  • 動物

「鳳鳴朝陽」(ほうめいちょうよう)

 2017年は丁酉(ひのととり)年ですから、トリにちなむ四字熟語をはじめにトリあげておきましょう。年初に明るい希望を与えてくれるのは、やはり伝説のオオトリ(鵬・鳳凰・鴻)にちなむものでしょう。すでに「鵬程万里」(2013・7・31)は飛び立ちましたから、ここでは「凰鳴朝陽」(『詩経「大雅・巻阿」』など)でしょうか。鳳凰が初日の出のときに優美に飛翔して鳴くことがあれば、天下太平の吉兆とされます。それはまた賢者が時宜を得て、正義の抱負を展開することにいわれます。
 鳳は雄で凰が雌、ともに飛ぶ「鳳凰于飛」は夫婦相愛の姿とされて、婚礼の折りに家庭和睦の祝辞に用いられます。したがって「鳳鳥不至」(『論語「子罕篇」』から)となると、政治が乱れて希望のない世の中の例に。また「鳳起雲湧」は改革期に堂々と大義を論じること。湖南省出の楊度(ようたく)が日本留学(法政大学)時に創作した「湖南少年歌」は多くの愛国青年を鼓舞したことで、梁啓超が「鳳起雲湧」と称えています。
 
| 1/1PAGES |
webサイトはこちら

堀内正範氏

日本丈風の会 代表
Web月刊「丈風」編集人

当社が永く校正で携わった、『知恵蔵』(朝日新聞社)の元編集長、朝日新聞社社友。
現在は「日本長寿社会」を推進する「日本丈風の会」を主宰し、アクティブ・シニアを応援している。 中国研究を基にした四字熟語への造詣も深く、時事を切り口に、新聞や書籍において解説を行なっている。
日本丈風の会ホームページにて、「現代シニア用語事典」も掲載。

S M T W T F S
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031    
<< January 2017 >>

月別アーカイブ