- 2017年10月25日(水)
- くらし・家庭
「損之又損」(そんしゆうそん)
損と損を之と又でつないで安定したたたずまいがありますが、しかし理解には想像力を要求する成語です。損は手で取り去って減らすのが語源で、損失が身近ですし、そこなう意味では損傷・損害があります。損益や損得では語頭をしっかり固めています。
『老子「第四八章」』には、「学を為す者は日に益し、道を為す者は日に損し、之を損して又損し(損之又損)、以って無為に至る。無為にして為さざるなし(無不為)」と記されます。無不為という二重否定による強い肯定がどう為すかへのこだわりを伝えます。同文で『荘子「知北游篇」』に表れます。老子は「学」を対比し、荘子は「知」で示します。
「知」(擬人)は帝宮で黄帝にまみえて「何を思い慮れば道を知るや」と問います。黄帝は答えを知らないという無為謂を認めたうえで、聖人は「不言の教えを行う」(老子「第二章」)といって「損之又損」を引きます。天下を取る者が「損人利己」や「損公肥私」を避けて、言動をひかえて「謙虚」な態度を保持することにいいます。