東京都新宿区の校正・校閲会社、円水社(えんすいしゃ)のブログ

「元宵灯謎」(げんしょうとうめい)

 満月に灯を点して豊作を祈り、満月に灯をささげて豊作を感謝する夜の灯の節日といえば「元宵節」(農暦1月15日。ことしは3月2日)と「中秋節」(農暦8月15日。ことしは9月22日)です。月のない「春節」(2月16日)を迎えたあと、夜空に三日月がのこり、半月になり、凸月になり、そして最初の満月が星空に昇ってきます。
 元宵節には台湾では「平溪天燈祭」の何万というランタン飛ばしが幻想的な夜を演出して人気に、日本では「長崎ランタンフェスティバル」が開かれています。唐代の「観灯」では玄宗の父叡宗のときの「元宵灯節」が豪華で、灯輪を建て燃灯五万盞を掛けたといいます。玄宗も上陽宮中に灯楼をつくらせて貴妃や百姓(当日は開門)とともに鑑賞しています。灯に謎を書いて当てっこをする「元宵灯謎」(『武林旧事灯品』など)は故事成語とちがって農民の節日習俗から生まれた四字熟語です。夜市で賑わう宋都では詩詞や謎のほか抗議や戒律やコミカルな文も掲げられて道ゆく人を楽しませました。
 
  • 2018年02月21日(水)
  • 自然

「雪上加霜」(せつじょうかそう)

 いまは災難の上に災難が重なることの比喩として「雪上加霜」はよく用いられます。平昌冬季オリンピックで食中毒(ノロウイルス)が起きたり、ロシア選手にドーピング疑惑が生じたりで、「雪上加霜」といったところです。禅宗語録には「頭上著頭、雪上加霜」(釈道原『景徳伝灯録「一九巻」』から)とあって重複が多い意味でいわれています。
 子どもの将来のためにさまざまな援助をして「雪中送炭」(2016・1・20)につとめる両親の暮らしぶりは「雪上加霜」にならざるをえません。
 上海の季風書園の閉店についても「雪上加霜」がいわれました。上海図書館地下の租借の継続ができず、といって上海の他の高価格の場所での営業はむりということで閉店をきめたもの。1月31日、改革開放後の多様な立場をみとめてきた「自由」の場の消失を惜しむ読者が集まりました。施設側が地下の設備補修を実施したため館内は停電、人びとは暗闇の中でろうそくを点し、本を読み、歌を歌って、自由に過ごしました。

 

「望子成龍」(ぼうしせいりゅう)

 農暦の1月1日(初一)が「春節」です。ことしは2月16日。東アジア漢字文化圏では日本を除いてどこも国の休日として祝っています。この日、ご存じのように中国では除夕(除夜)には家族で餃子を食べながら夜8時からの中央電視台CCTV「春晩」(春節聯歓晩会)をみて年越しのカウントダウンを迎えます。
 両親はわが子がいい成績で学業を終え社会に出て傑出した人物になるよう切望して「望子成龍」(周而復『上海之早晨「四部」』など。女性は「望女成鳳」)をいい、将来は北京大学か清華大学かに入れるよう圧歳銭(お年玉)1万元?を紅包(圧歳包)に収めて渡しますが、本人には重圧になるようです。おおかたは失望に終わるわけですから。
 林則除にこんなエピソードが残っています。父親に付き添われて科挙「童子試」に臨んだおり、父親が照れてこの子は「騎父作馬」(父を馬にして乗る)といったとき、すかさずにわが父は「望子成龍」ですといってのけたそうです。「望子成名」ともいいます。
 

「不速之客」(ふそくしきゃく)

 とくに招いてもいないのに突然にやってくる客、したがって歓迎できない客を「不速之客」(『易経「需卦」』など)といいます。『易経』では「不速之客三人来、敬之終吉」とあって、懇切にもてなすことで結果は吉といいますが、ふつうには貶す意味合いで用いられています。人ではダボス会議に押しかけたトランプ大統領、自然現象では黄塵、冬将軍、生き物ではお茶で知られる雲南省普洱(プーアル)市の民家に野生の大象が食を求めてやってくるなど。歓迎どころか跳んで逃げることになります。
 中国科学院院長・中日友好協会名誉会長をつとめた郭沫若は、祖国を離れる船上で潸潸(さんさん)と涙を流して日本に亡命した自分は意外な「不速之客」であったにもかかわらず、真から懇切な歓迎をうけた(『海涛集「跨着東海二」』)と記しています。滞在中に『中国古代社会研究』などを執筆した市川市の旧宅は移築・復元されて「郭沫若記念館」に、生地四川省の楽山市(大仏で有名)と市川市は友好都市になっています。
 

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堀内正範氏

日本丈風の会 代表
Web月刊「丈風」編集人

当社が永く校正で携わった、『知恵蔵』(朝日新聞社)の元編集長、朝日新聞社社友。
現在は「日本長寿社会」を推進する「日本丈風の会」を主宰し、アクティブ・シニアを応援している。 中国研究を基にした四字熟語への造詣も深く、時事を切り口に、新聞や書籍において解説を行なっている。
日本丈風の会ホームページにて、「現代シニア用語事典」も掲載。

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