東京都新宿区の校正・校閲会社、円水社(えんすいしゃ)のブログ

  • 2020年05月27日(水)
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「節外生枝」(せつがいせいし)

 春から夏へ。樹木は幹を太らせ枝葉を茂らせます。みずからの生きる都合で「節外に枝を生ず」(『鏡花縁「八八」』など)ということになります。そこで植木職人は不要な枝(徒長枝)をさっと切り落として樹形を整えます。もとからあった枝の節から新たな枝が生じる「節外生枝」は、問題の外にまた新たな問題を生じることに例えていいます。
 ここからが問題で、人間社会の場合には何が「節」であり何が「節外の枝」であるかの判断を同時代の人間がおこなうことになるからです。社会の動静の中で発展させるものと不要なものの判断をだれがするかで社会の態様も将来の樹形も変わるからです。「節」については「節用愛人」(『論語「学而」』から)が古くからいわれています。
 三歳馬の優駿を決める「ダービが近づきました。生まれて三年、牧場では群れを害する馬「害群馬」別項は飼い慣らすか除去せねばなりませんそのことから集団に危害をおよぼす汚職官僚など「害群馬」と呼ばれて除去が課題となります。
 

  • 2020年05月20日(水)
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「千金買笑」(せんきんばいしょう)

 美しい女性のおのずからなる笑い顔は千金にも値するという「一笑千金」はほめことばです。ですが、テレビ画面で見られていることを意識している女性の笑顔はお金をかけてつくられた「千金一笑」か、お金を使って女性の歓心を買いとった「千金買笑」(『東周列国史「二回」』など」になっています。「一笑千金」を見出しに立てたいのですが。
 コロナ騒動後の「新しい生活様式」ではどうなるのでしょう。テレビで推奨される三密を避けたり、ソーシャル・ディスタンスを取り入れたり、手洗いをするといったことでは収まらないでしょう。感染前にもどるのではなく、もっと暮らしの根元の見直しが求められるでしょう。テレビが時代を映す鏡というなら、医療の現場や店じまいなどのきびしい現実を、おふろあがりで何時間も鏡の前にいたような女性アナや仕立ておろしのスーツにネクタイ姿の若い記者に解説させるような生活感の欠落をまず見直すことでしょう。
 実直武骨な男性人材を集めることには「千金買骨」があるようです。

  • 2020年05月13日(水)
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「推三阻四」(すいさんそし)

 四字熟語の三と四の数字の重ね方には妙味があります。春先に用いられる「三寒四温」は、日ごとに春めく気配を伝える親しいことばですが、この三つ推して四つで阻むという「推三阻四」(『儒林外史「一回」』など)は、成立にむけた事項を三つあげながら四つの不成立の事項を設けることで、不成立に傾く気配を伝える巧みなことばです。
 今回の「コロナウイルス」への対応に際しても、政治家や官僚は「スピード感」の欠如をいわれながらさまざまな政策決定をして推進していますが、実施の現場で阻止されることが次々に起こっています。その都度さまざまな理由があげられ実施されない言い逃れが繰り返されています。現場で実施されず、「推三阻四」の口実の陰で企業はつぶれ人も死ぬという結果を生んでいるのです。「三翻四覆」ともなれば変容はなはだしくもはや信用できません。「三三五五」といえばほどほどの数のひろがりを、「三三両両」となるとそれほど多くないことを伝えます。数字を重ねる表現の妙味です。

  • 2020年05月06日(水)
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「非常之人」(ひじょうしじん)

 同時代の常人にはわからない未来の事を先見的にとらえてその実現をはかる人を「非常之人」(『史記「司馬相如列伝」』・『三国志「魏書・武帝紀」』など)といいます。漢の武帝に司馬相如は、「けだし世には必ず非常の人あり、然る後に非常の事あり。非常の事ありて後に非常の功あり」といいます。まず未萌のうちに行く先を見てしまった「非常の人」が、命をかけて実現をはかる。「そもそも非常の人、超世の傑と謂うべきなり」と『三国志巻頭の「魏書・武帝紀」に曹操についての評を記しています。「非常の人」によって時代は動き、ひとたび混乱をみますがやがて時を経て混乱は収拾されます。
 常人ははじめは異として懼れますが、実現されたときには安堵して納得します。いま新型コロナウイルスに関する非常のとき、いまは情報化の時代、ひとりの英傑が登場するのではなくて、「専門家会議」の提言である「新しい生活様式」についても具体例を期待するのではなく常人が自らの生活のなかで工夫して実行してゆく時代なのです。
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堀内正範氏

日本丈風の会 代表
Web月刊「丈風」編集人

当社が永く校正で携わった、『知恵蔵』(朝日新聞社)の元編集長、朝日新聞社社友。
現在は「日本長寿社会」を推進する「日本丈風の会」を主宰し、アクティブ・シニアを応援している。 中国研究を基にした四字熟語への造詣も深く、時事を切り口に、新聞や書籍において解説を行なっている。
日本丈風の会ホームページにて、「現代シニア用語事典」も掲載。

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