東京都新宿区の校正・校閲会社、円水社(えんすいしゃ)のブログ

  • 2020年08月26日(水)
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「百年樹人」(ひゃくねんじゅじん)

 樹木を育てるには十年でいいが、人材を育てるには百年かかるという「十年樹木、百年樹人 」(『管子「權修」』から)は合わせて用いられています。毛沢東も人材養成のことで古話として引いています。人材ではなく、いま話題の「人生百年」については「百齢眉寿」や「人生百年如過客」がいわれますが、中国の実情は世界最速で「高齢化率」(65歳以上の人口比率)が25%を超えた日本ほど切迫感がないようです。
 国際的に断トツの高齢化先進国なのに、後進国意識の抜けない官僚は、ベストセラー「Life Shift 100年時代の人生戦略」の筆者イギリスのリンダ・グラットン女史を、政府の「人生100年時代構想会議」の箔つけ議員として招聘して意見を聞いたりしています。が、「人生百年(一世紀)」の論者なら樋口恵子・高齢社会をよくする女性の会理事長が国際的な先達です。近著『老〜い、どん!、あなたにも「ヨタヘロ」期がやってくる』(婦人之友社)は100歳をめざして生きるヨタヘロ人生を素直に明るく論じています。

  • 2020年08月19日(水)
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「日新月異」(にっしんげつい)

 進歩発展の乏しい「依然如故」の時期をすごして、新たな“王朝”が立ち上がるとき、禹域(中国)での発展期の時代変化は迅速で、新事物や新事象が次々に出現することになります。『礼記「大学」』に「日新、日日新、又日新」と記す状況となり、「日新月異」(『黄淳耀「陶庵集」』など)から「月異にして歳不同」ということになります。わが国で用いる「日進月歩」のスピ−ド感では追いつけそうにない勢いなのです。
 2017年12月31日、習近平国家主席は「新年賀詞」で2017年を「天道酬勤、日新月異」という八字で回顧しています。「天道酬勤」は精出して勤務に奮闘する者は必ず報われるということ。日々あらたな事物が出現し月々変化して2020年までに史上実現をみなかった「全民脱貧」という目標を達成するというものでした。いま5G通信技術「ファーウェイ(華為)」や「海域進出」そして「人権」でアメリカと覇権を争っていますが、「今是昨非」の変わり身の早さも「日新月異」なのです。

  • 2020年08月12日(水)
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「殊途同帰」(しゅとどうき)

 原典になっている『周易「系辞・下」』では「同帰殊途」で、同一の目的(理想の社会)のために異なった道(百慮)があるといいます。のちにはいろいろな手法を取りながら同じ結果にいたるという「殊途同帰」(范仲淹「堯舜率天下以仁賦」など)が広く用いられています。「殊路同帰」(『史記「礼書」』)や殊途同致」(嵆康「与山巨源絶交書」)も見られます。別項の「左右逢源」(2013・11・6)は、同じ目標をめざす左右二者の争いでした。
 いままさに「新型コロナウイルス」のワクチン開発が「殊途同帰」の真っ只中にあります。感染者が2000万人を超えて一刻も早い実用化が求められています。欧米の著名な製薬会社とともに日本の塩野義製薬も加わって。中国のカンシノもトップグループにいて。そんな中でロシアが承認を発表しましたが、最後の臨床試験を終えないでの承認で安全性に疑義があるとされました。一人の犠牲者も出さないことが共有の目的になっているからです。「殊途同帰」の日々がつづきます。

  • 2020年08月05日(水)
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「手到病除」(しゅとうびょうじょ)

 未知のコロナウイルスの襲来によってもたらされた「パンデミック(世界大流行)」のさなか、各国の医師・看護師の日に夜を継ぐ尽力がつづいています。すぐれた医術によって病苦を除き去ることを「手到病除」(『西遊記「六八回」』など)といいます。きょうも日本各地の病院で重篤の患者を人工呼吸器やECMO(体外式人工肺)も駆使して医師・看護師・臨床工学技士があらゆる手を尽くして治療にあたっています。
 すぐれた医術によって重篤な患者の命を救うように、国家に一大事が生じたときには必ず名医にも似た人物が現われて、窮地を救い人民を休んずるというのも「手到病除」です。いままさに病毒により生じた国難に遭遇して、国民の命を守るために名医の魂をもった指導者が内閣の中心にいて、時々刻々もたらされる内外の情報を命がけで集約して、迅速で正確な対策を国民に訴えることで、国民の病毒撲滅への信頼と安心を呼び起こすことができるのでしょう。わが国の実情は何かが違うようです。

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堀内正範氏

日本丈風の会 代表
Web月刊「丈風」編集人

当社が永く校正で携わった、『知恵蔵』(朝日新聞社)の元編集長、朝日新聞社社友。
現在は「日本長寿社会」を推進する「日本丈風の会」を主宰し、アクティブ・シニアを応援している。 中国研究を基にした四字熟語への造詣も深く、時事を切り口に、新聞や書籍において解説を行なっている。
日本丈風の会ホームページにて、「現代シニア用語事典」も掲載。

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