東京都新宿区の校正・校閲会社、円水社(えんすいしゃ)のブログ

  • 2018年09月12日(水)
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「和而不同」(わじふどう)

 日中平和(中日和平)友好条約締結40周年にちなんで、「“和而不同”国際書画展」(4月・東京)や「“和而不同”中日芸術家作品展」(8月・名古屋)が開かれています。東京展を訪れた村山富市元首相は中国の少年たちの作品に驚いたようです。
「君子は和して同ぜず、小人は同じて和せず」(君子和而不同、小人同而不和。『論語「子路」』からと孔子はいいます調和はする同調はしないというのが「和」のありようで、お互いに相手の主体的な意見や立場を認めあうこと。「同じて和せずというのは「雷同一律」のことで、確固とした意見や立場をもたず相手に同調すること。吸い物は素材や調味料の持ち味を活かし、音楽は楽器の要素を引き出して成り立ちます
「和」の文化の遠源にふれ「和而不同の社会観」の涵養を習主席も求めています。わが国はもとより「和」を尊しとする国。政治はむろんのこと、あらゆる分野で主体性をもちつつ外国との「和」をどう築いてゆくかが今後の課題になるでしょう。
 

  • 2018年09月05日(水)
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「笑容可掬」(しょうようかきく)

 掬は両手ですくうこと。両手ですくうような満面の笑みが「笑容可掬」(『警世通言「二巻」』など)です。ジャカルタ・アジア大会で6個の金メダルを取って最優秀選手にも選ばれた池江璃花子さんの笑み、表彰台もいいが、ゴールしたあと振りかえって電光掲示板で勝利を確認して思わずはじけ飛んだ笑みが「笑容可掬」にふさわしい。

「笑容可掬、焚香操琴」というのは、孔明が城楼の上に座し、香を焚き琴を操りながら笑みを浮かべている姿をみて、司馬懿が攻めあぐねるという場面が『三国演義「九五回」』」に描かれています。「面目可辨、笑容可掬」というのは、乾隆皇帝の妃魏佳氏孝儀純皇后の東陵が1928年に盗掘に遭い、皇帝溥儀が精査させたとき、153年を経て黄色龍袍につつまれた皇后の表情の艶やかさに驚いた官員の記したもの。TVドラマ「延禧攻略」の主役珞がその人です。トランプ大統領が習近平主席に北朝鮮問題で感謝して用いられましたが、「可掬」にそぐわない。こちらは「笑容満面」でいい。

  • 2018年08月29日(水)
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「心中有数」(しんちゅうゆうすう)

 日本では「心中」といえば、「しんじゅう」と読んで、許されぬ仲の男女が死を選んでともに命を断つことをいいます。もっともたいせつな命を捧げ合う愛の表現です。相思相愛のふたりばかりでなく一家心中や無理心中もあります。捧げるものは命とかぎらずに髪(断髪)や指(切指)などの場合もあります。「心中(しんちゅう)」の証に「心中(しんじゅう)」するといった意味での用い方は中国にはないようです。

「心中有数」(馮徳英『迎春花「八章」』など)は、心の中ではその意味合いや原因を了解していて解消への糸口は得ているものの、それをことばにしたり表示したりできていない状態をいいます。『荘子「天道」』には、「心に応ずれど口言う能わず、有数はその間に存り」と説かれています。前出の「胸有成竹」(2013911や「知己知彼」や「百無一失」などが横合いにあって説明してくれます。「心中無数」もあって、こちらは博学すぎて心の中にあまりにさまざまありすぎて分別収拾がつかない状態をいいます。
 

  • 2018年08月22日(水)
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「群龍無首」(ぐんりゅうむしゅ)

 

 近年のこの国は、毎年「首」(首相)をすげかえた「一年一相」の七年のあと、「一強五年」という変則の時期にあります。

 易では「群龍無首」(『周易「乾」』から)は本来「吉」であると説きます。天徳による治世がおこなわれていたころには、優れた能力をもつ人物(龍)がたくさんいて、お互いに補いあってしごとをしていたので、とりたてて「首」とする人物を置く必要がなかった(無首)のです。ところが時代がくだって龍ならざる俗人による治世になると、「群龍無首」は優れた指導者がいない(無首)ために何も決まらず先へ進めないことをいうようになります。そこでわれから天徳の命に迫ろうとして「首」(首相)をめざす人物が現れます。それでも成果があがらなければ首をすげかえすげかえして対応します。次の首のすげかえでも吉卦の「群龍無首」に近づけず、いっそのこと「抜類超群」の人物を国民参加で政策(天の意思)を確かめつつ選び出す大統領制のほうが近道かもしれません。

  • 2018年08月15日(水)
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「捲土重来」(けんどちょうらい)

 夏の甲子園「第100回記念大会」に102年ぶりの全国制覇をめざした北神奈川代表の慶応高校。地方大会の一戦一戦に「四字熟語」を掲げて勝ち抜いてきたといいます。春のセンバツ初戦で彦根東高校に3−4で敗れた悔しさを晴らすべく、夏の初戦、中越高校戦に掲げたのがこの「捲土重来」でした。3−2サヨナラで結果を示しています。
「捲土」は人馬が土を巻き上げて疾駆すること。ひとたび敗走してのち勢力を回復して攻め返すのが「捲土重来」(杜牧「題烏江亭」から)で。楚の項羽は劉邦の漢軍に垓下の戦いで敗れて、愛姫の虞美人に死を賜ったあと、長江北岸の烏江まで落ち延びます。しかしここで江東に還るのをはじとし自刎しました。(『史記「項羽本紀」』から)
 夏の甲子園大会で覇を競球児たちは、敗北したあと 甲子園の土袋につめて持ちかえりますその悔しさは全国制覇して晴らされるもの。2回戦で敗れた慶応高校は激戦を勝ち抜いて優勝決定戦でこの「捲土重来」を掲げるべきだったでしょう。
 

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堀内正範氏

日本丈人の会 代表
Web月刊「丈風」編集人

当社が永く校正で携わった、『知恵蔵』(朝日新聞社)の元編集長、朝日新聞社社友。
現在は「日本長寿社会」を推進する「日本丈人の会」を主宰し、アクティブ・シニアを応援している。 中国研究を基にした四字熟語への造詣も深く、時事を切り口に、新聞や書籍において解説を行なっている。
日本丈人の会ホームページにて、「現代シニア用語事典」も掲載。

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