東京都新宿区の校正・校閲会社、円水社(えんすいしゃ)のブログ

  • 2019年01月16日(水)
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「弾冠相慶」(だんかんそうけい)

 志を同じくする友人が高官に任命されたのをわがことのように喜ぶとともに、みずからの冠(帽子)の上の塵を弾いて任官の準備をするというのが「弾冠相慶」(『漢書「王吉伝」』から)です。故事のもとになったのは琅琊王氏の祖といわれる王吉(字は子陽)と貢禹で、「王陽在位、貢公弾冠」として知られています。知名人の周辺から人材が躍り出ることにいわれ、中国に独有の人材登用のありかたとして用いられています。
 それは一国主義のトランプがアメリカに登場してきたことで、ブラジルのトランプとしてボルソナールのような人物が熱狂のなかから躍り出ることにも通じます。ペンタゴン(五角大楼)が世界の局地戦から米兵を引いているのに対してロシア軍が「弾冠相慶」といった立場で躍り出ています。こんなときに北方領土問題でわが国の主張が通る状況にはないでしょう。球界でジャイアンツが優勝を目標に掲げて、生え抜きの選手を放出してまで他から人材をあつめる手法もそのうちといえるのでしょう。

  • 2019年01月09日(水)
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「有志竟成」(ゆうしきょうせい)

「有志竟成」(『後漢書「耿弇伝」』から)は、昨年ノーベル生理学・医学賞を受賞した本庶佑京都大学特別教授を支えつづけた座右の銘で、本庶さんは「志をしっかりしていればいつかは実現できる」と解説し、色紙に書いてノーベル博物館に寄贈しています。
「有志者事竟成」は、後漢時代に難敵であった斉を平らげた耿弇(こうえん)を光武帝劉秀が称賛した名言として知られ、のちにその故事から志を堅持して努力しつづけることの重要性をいう四字熟語「有志竟成」になったもの。革命事業に十回失敗したといわれる孫文もこのことばに支えられ励まされたといいます。清華大学付属中学が順利(継続進展の標語)にしていますし、わが国の浜松市立北浜中学校が校訓としています。
 京都大学は「本庶佑有志基金」を設立。基金は同賞の賞金(約1億1500万円を共同受賞者と折半)を原資に、成果をがん治療薬とした製薬企業(オプジーボ、小野薬品)からの特許料収入なども充てて、若手研究者を長期にわたって支援します。

 

  • 2019年01月02日(水)
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「頂天立地」(ちょうてんりっち)

 頭上は遮るものもない青天、両脚でしっかりと大地を踏まえて立つ姿が「頂天立地」(釈普済『五灯会元「巻五六」』など)です。時代の潮流にあらがっても堂堂正正と大業をなしとげようとする気概非凡な人物にいいます。郭沫若は『屈原「第三幕」」』で楚国の棟梁であり「頂天立地」の柱石である屈原の姿を描いています。
 建造物ならデザインに古代の胴細な酒器である尊の形をとりいれて北京一の高さをめざすシティック・タワー(中国尊が名称。528m)でしょうか。わが国の長寿堅強のシンボルであり、八〇歳でエベレスト頂上に立ち、いま八五歳で南米最高峰アコンカグア(6961m)に挑む三浦雄一郎さんの姿に通じます。スポーツなら世界一を、ものづくりなら品質随一をめざすことに。わが途をゆき天下に愧じないことからテレビドラマや歌詞のタイトルにもなっています。天と地の間に人が入って地にふんばり天を押し上げる「立地嘉掘廚あって、こちらは死力を尽くして艱難のきわみに耐える人物をいいます。
 

  • 2018年12月26日(水)
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「迷途知返」(めいとちへん)

 途に迷ってしまったら知っている途に返ればよいというのが「迷途知返」(『梁書「陳伯之伝」』など)です。過ちを犯したと察したならば正しい途に改めればよいということは屈原(離騒)もいい、陶淵明(帰去来辞)もいい、朱憙(集注)もいう。時代を越えて先哲がいい、「過ちては則ち改むるに憚ることなかれ」(『論語「学而」』)はだれでも知っているし、世に言いならわされているのですが、過ちは繰り返されているのです。
 アメリカの中国に対する経済制裁が貿易戦争といわれています。トランプ大統領が米国経済を悪化させることに気づいても国民の選択ですからもはや元の途に返れません。これに対する中国側の主張が「迷途知返」で正しい途に返れというのです。第二次世界大戦の経験から国際協調がつづいて70年、ここで反転してまた米国一国主義が台頭しました。かつて第一次世界大戦後の国際協調を破ってアメリカが一国主義をとり、それが原因で大不況に陥った経緯を再現する過ちを改めることができないのです。
 

  • 2018年12月19日(水)
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「握手言歓」(あくしゅげんかん)

 反目しあったのちに和解し、親密さをこめて握手をしことばを交わすことを「握手言歓」(巴金『懺悔「両個孩子」』など)といいます。「握手言和」も日常的につかわれ、よくあることですからよく用いられています。南北朝鮮の金正恩・文在寅両首脳の出会いは典型的な事例です。米中両大国の首脳の握手は固いですがことばは少ない。特朗普(トランプ)・普京(プーチン)の「双普会」となると、親交と悪化が混在しているので印象は複雑です。安倍・プーチン、安倍訪中は「握手言和?」といったところ。
 スポーツのサッカーなどではライバル同士が戦う前に双方のキャプテンが握手してゲームがはじまるとき、あるいは接戦のすえ1−1で勝ち負けなしの引き分けでおわったときに、握手とかかわりなく「握手言歓」がいわれます。伝統芸術と現代芸術の出合い、京都と西安、名古屋と南京といった時代を越えた友好都市の活動、かつて仇敵だった毛沢東と蒋介石の孫同士が台北で会って歓談するというのも「握手言歓」です。
 

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堀内正範氏

日本丈風の会 代表
Web月刊「丈風」編集人

当社が永く校正で携わった、『知恵蔵』(朝日新聞社)の元編集長、朝日新聞社社友。
現在は「日本長寿社会」を推進する「日本丈風の会」を主宰し、アクティブ・シニアを応援している。 中国研究を基にした四字熟語への造詣も深く、時事を切り口に、新聞や書籍において解説を行なっている。
日本丈風の会ホームページにて、「現代シニア用語事典」も掲載。

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