東京都新宿区の校正・校閲会社、円水社(えんすいしゃ)のブログ

  • 2017年09月13日(水)
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「濠梁観魚」(ごうりょうかんぎょ)

 あるとき荘子は恵子(恵施)と濠水の橋の上から魚(ハヤ)を見ながらこんな議論をします。「魚がゆったりと泳いでいるが、あれは魚の楽しみだね」。すると恵子は「あなたは魚でないのだから魚の楽しみがわかるわけがない」と議論をしかけます。そこで荘子は「あなたはわたしではない。どうして知る知らないをいえるのかね」。恵子はいいます「わたしはあなたでない。だからあなたを知らない。あなたは魚でない。だから魚の楽しみを知らないのはいうまでもない」。荘子がいいます「話をもとにもどそう。あなたはわたしが魚の楽しみがわかると知ったうえで問いかけたではないか」

「濠梁観魚」あるいは「濠梁之弁」(秋水篇)として、二人の立場の違いを伝える話として記されています。恵施は名家(論理学派)を代表する人物で、「就事論事」の立場で事実をもとに理性的に思考をします。それに対して荘子は、自己の感知した情をもって他を理解し自己の哀楽を転移することができるとします。魚もまた楽しいのです。

  • 2017年08月30日(水)
  • 動物

「蟷臂当車」(とうひとうしゃ)

 小さなカマキリが両臂を怒らせ通りかかった大きな車を威嚇します。自らの力を量らず強大な力量のものに抗することが「蟷臂当車」(『荘子「人間世篇」』)です。才美を是とする者の戒めとしています。またトラ飼いはトラが獲物を殺す時の怒りや引き裂く力を出させぬため、生きたものやまるごとを与えず飢飽の時を知って餌を与え、養う者に媚びるようしむけます。ウマに馴れ親しんだ者は、蚊やアブを叩いたりすることでウマが暴れて愛を失ったりします。類を異にするものを知って順わせる術を説いています。

 また「蟷螂捕蝉、黄雀在後」(「山木篇」)は、荘子のこんな経験を伝えます。あるとき禁苑の栗林でカササギを見かけ、はじき弓で射ようとします。そのとき一匹のセミが木蔭で安らいでいるのに気づきます。その後ろでカマキリが斧を上げてねらい、カマキリをカササギがねらい、カササギに自分が弓を向けている。「ああ物は累を及ぼし、利と害は互いに招き合うものだ」とつぶやき立ち去りますが、苑の番人に咎められます。

  • 2017年08月23日(水)
  • 動物

「白駒過隙」(はっくかげき)

 人生の短さをいう表現のひとつ。白馬が隙間を駆け抜けるという「白駒過隙」(『荘子「知北游篇」』)は、あざやかな印象を残して人生の時間の短さを伝えます。荘子は「人生天地の間、白駒過隙のごとし、忽然として已む」といいます。「忽然として已む」というのは、「光陰如(似)箭」(光陰矢のごとし)ほどには速くなく、訳注によれば短いとはいえ「暫」といったほどの長さがあって、重要な会議のひとつくらいは行えるようです。
 その短い隙間を用いて北宋初頭の長い平和を築いたのが趙匡胤でした。趙匡胤は全土統一の闘いをともにした功臣たちを前に、人生は「白駒過隙」であり「争いをやめて天年を終えよう」と呼びかけ、杯をあげて功臣たちに兵権を捨てさせたのでした。
 人生の短さをいうもうひとつの表現が「人生如朝露」(曹操「短歌行」)。三国魏の曹操は、朝露のような刹那の生を酒と歌に託して自らを励ましつつ、周公旦に学んで賢人の訪れを待っています。もうひとつ女性にも励まされて、25男をもうけています。
 

  • 2017年08月02日(水)
  • 動物

「曳尾塗中」(えいびとちゅう)

『荘子』から前回は「木雁之間」「甘泉先竭」「直木先伐」(山木篇)を取り上げましたが、もっとも荘子らしい成語がこの「曳尾塗中」(秋水篇)です。宋国の蒙(河南省商丘近く)にいた荘子は、南の新興国楚の王から招請を受けます。釣りをしていた荘子は、遣いの者に、楚の宮殿には長寿の形見としてカメが収蔵されているようだが、どろの中を自由に這いまわるカメとどっちが幸せかねといって断ります。荘子らしいエピソードです。
『老子』と比べると少ないですが、本稿でも『荘子』から「邯鄲学歩」(秋水篇2013417)、「鵬程万里」(逍遥遊篇2013731)、「心服口服」(寓言篇2015722)、「空谷跫然」(徐無鬼篇201767)などを取り上げています。
 荘子にちなむ四字熟語としては、「害群之馬」「学冨五車」「甘拝下風」「涸轍之鮒」「井底之蛙」「淡水之交」「朝三暮四」「沈魚落雁」「呑舟之魚」「白駒過隙」「尾生之信」などが知られます。この夏は『荘子』にかかわるいくつかをご紹介いたします。
 

  • 2017年01月04日(水)
  • 動物

「鳳鳴朝陽」(ほうめいちょうよう)

 2017年は丁酉(ひのととり)年ですから、トリにちなむ四字熟語をはじめにトリあげておきましょう。年初に明るい希望を与えてくれるのは、やはり伝説のオオトリ(鵬・鳳凰・鴻)にちなむものでしょう。すでに「鵬程万里」(2013・7・31)は飛び立ちましたから、ここでは「凰鳴朝陽」(『詩経「大雅・巻阿」』など)でしょうか。鳳凰が初日の出のときに優美に飛翔して鳴くことがあれば、天下太平の吉兆とされます。それはまた賢者が時宜を得て、正義の抱負を展開することにいわれます。
 鳳は雄で凰が雌、ともに飛ぶ「鳳凰于飛」は夫婦相愛の姿とされて、婚礼の折りに家庭和睦の祝辞に用いられます。したがって「鳳鳥不至」(『論語「子罕篇」』から)となると、政治が乱れて希望のない世の中の例に。また「鳳起雲湧」は改革期に堂々と大義を論じること。湖南省出の楊度(ようたく)が日本留学(法政大学)時に創作した「湖南少年歌」は多くの愛国青年を鼓舞したことで、梁啓超が「鳳起雲湧」と称えています。
 
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堀内正範氏

日本丈風の会 代表
Web月刊「丈風」編集人

当社が永く校正で携わった、『知恵蔵』(朝日新聞社)の元編集長、朝日新聞社社友。
現在は「日本長寿社会」を推進する「日本丈風の会」を主宰し、アクティブ・シニアを応援している。 中国研究を基にした四字熟語への造詣も深く、時事を切り口に、新聞や書籍において解説を行なっている。
日本丈風の会ホームページにて、「現代シニア用語事典」も掲載。

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