東京都新宿区の校正・校閲会社、円水社(えんすいしゃ)のブログ

  • 2016年12月14日(水)
  • 植物

「葉落帰根」(ようらくきこん)

 樹木の葉が、根から発した枝の先に春に芽を生じて夏に茂って秋には落ちて根に帰るようすを「葉落帰根」(『剣南詩稿「八四・寓嘆」』など)といい、人の活動やものごとが本源を忘れずに戻ることに例えます。
「樹高千丈、葉落帰根」と合わせていい、中島みゆきの歌のタイトルにもなっています。中島みゆきの歌では、ひとひらの葉が空を漂いながら見知らぬ地へと流れていくけれど、最後は木の根がゆりかごを差し伸べてきっと抱きとめてくれるだろうと、孤独にたえて漂いつづけます。中国残留孤児の望郷の思いがこのことばに込められていて、瀋陽には帰国孤児と養母をつなぐ「瀋陽落葉帰根の会」があります。
 それに対して「落地生根」というのは、本源の木から遠く離れた地に落ちてそこでみずからの力を信じて新たな根をつくる姿をいいます。神戸華僑歴史博物館に飾られている「落地生根」は、故郷から離れて生きる華僑の人たちの強い心情を示しています。
 

  • 2016年12月07日(水)
  • 植物

「寒花晩節」(かんかばんせつ)

 寒花は晩秋から初冬の寒さにも耐えてしっかり咲いている花のことで、「寒花晩節」(『宋名臣言行録・韓「九日小閣」』など)は、節操を保って晩年を過ごすようすに例えていいます。「黄花晩節」ともいうのは、菊(黄花)がそのころに花をつけることから。同じ意味合いの「桑楡晩景」は、日の落ちるところを指す桑や楡の木の梢を夕陽が照らしている情景で、晩年の風姿が後人の目標として輝いているようすをいいます。

それに対して「晩節不終」は、築き上げてきた名声や評価を晩年に覆してしまうこと。鐘(鍾)が鳴りおわり漏壺の水が滴りおわる「鐘鳴漏尽」の終末期を、節操を保てずに「晩節を汚す」ことでよく用いられます。昨今の東京都知事選はその舞台で、首相を務めた細川・小泉両氏が失格知事だった舛添氏に敗れた際にいわれ、猪瀬知事に「晩節を汚すな」と辞職を促した当人の石原元知事がその立場となる。その末に小池知事が誕生しましたが、花ある知事が「寒花晩節」に至れるかどうかはわかりません。

  • 2016年09月21日(水)
  • 植物

「錦上添花」(きんじょうてんか)

「錦」は絹糸を色染めして織った織物の総称で、美しく鮮やかなものを例えていいます。空には錦雲が浮かび、池には錦鯉が泳ぎ、さらに相撲取りの醜名(しこな)にもよく見かけます。花を添えた「桜錦」という名はことに美しい。プロテニスの錦織(にしこり)圭選手もまた華麗です。

「錦上に花を添える」(黄庭堅『豫章文集「了了庵頌」』など)は、美しい錦織の上にさらに美しい花たとえば牡丹などの刺繍を添えることをいいます。お祝いの宴で晴れやかに歌を歌ったり、美酒を献じたり、麗人が花束を捧げる、そんな美の上にさらに美を添える演出が「錦上添花」です。

「衣錦還郷」(錦を衣て郷へ還る。『梁書「劉慶遠伝」』など)となると、中央での栄達という錦で身を飾って故郷へ帰ること。古来から男子はこの錦を最良のものとし、芸術家ならみずからの作品を寄贈するなどして「錦上添花」が成立します。

  • 2016年06月01日(水)
  • 植物

「独木難支」(どくぼくなんし)

 個人的にはどんなにすぐれた能力をもつ人であっても、当面する時代の趨勢や難局に個人では対応しきれないことを「独木難支」(許仲琳『封神演義「九三回」』など)といいます。国はもちろんのこと企業や組織などでも、個人では局面をいかんともしがたい場面があって、とくに企業の場合は倒産の危機を「独木支え難し」といって経営者は退く理由とします。ですから能力を大きく超える事業への参画を求められて対応に苦慮するようなときには、「独木難支」といって控える場合に用いられることになります。大きな建物が崩れようとする時、一本の木では支えられないという意味合いで「一木難支」ともいいます。
「独樹一幟」は、他にまぎれずに自立している樹木のように一家一派をなしているようすにいうことばですし、「独具慧眼」となると他に求められない独特の見解をもつことの形容で、どちらも「独」にかんするカッコいい誉めことばです。
 
  • 2016年05月25日(水)
  • 植物

「春笋怒発」(しゅんじゅんどはつ)

「春笋」は春のたけのこ。「怒」は怒るではなく気勢強盛なこと。春のたけのこの若い茎が勢いよく伸びることから、「春笋怒発」は好い事が次々に現われることにいいます。春の花々が色あせたころ、温かな雨のあとに芽を出すと一気に成長します。ひと晩で数十センチも伸びます。中国の都市のビル建設ラッシュはまさに「雨後春笋」(韜奮『萍蹤憶語』など)です。こちらは新しい事物が迅速に出現することにいいます。女性の繊細な手指を玉笋といいます。
 日本では農村の過疎化や竹材輸入もあって、放置された里山や雑木林では樹木が竹の地下茎に養分を取られ日光を遮られて枯れ、どこも竹林に代わっています。その一方で竹冠のつく日用品は使われなくなったり、プラスチックになったりしています。竿、箒、箸、箱、筥、筐、筒、筆、簪、笄、籠、笛、簾、箕、、笊、笈、筵、筏、篝・・。籍もあやうい。ただ「笑」だけが音が転じて借用されて大はやりですが。


 
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堀内正範氏

日本丈風の会 代表
Web月刊「丈風」編集人

当社が永く校正で携わった、『知恵蔵』(朝日新聞社)の元編集長、朝日新聞社社友。
現在は「日本長寿社会」を推進する「日本丈風の会」を主宰し、アクティブ・シニアを応援している。 中国研究を基にした四字熟語への造詣も深く、時事を切り口に、新聞や書籍において解説を行なっている。
日本丈風の会ホームページにて、「現代シニア用語事典」も掲載。

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