東京都新宿区の校正・校閲会社、円水社(えんすいしゃ)のブログ

  • 2016年08月17日(水)
  • 鉱物

「沙裡淘金」(さりとうきん)

 砂の中から金を取り出すことが「沙裡淘金」(徳行禅師『四字経』など)で、得ることがたいへん難しいこと、あるいは多大な費用を使っても成果が乏しいことにいわれます。農民作家の趙樹理は「読書」を「沙裡淘金のようなもの」といっています。また「棋譜」のなかには「沙裡淘金」と呼ぶほどにみごとな打碁の例があるようです。
 1900年に敦煌莫高窟で発見された「敦煌遺書」もその貴重な例ですが、変文(説話)の中にみられる仏法を求める心情の厳しさを伝える「砕身粉骨」や同じ野に生きる同類の死を悼む「狐死兎悲」といった四字熟語は「沙裡淘金」と呼ぶにふさわしい。
 リオ・オリンピックは日本選手のメダルラッシュに沸きましたが、とくに柔道では全階級で12個。女子70キロ級の田知本遥選手が、小学生のころから父親と姉からくる日もくる日も稽古をつけられて、そんな沙のような練習をかぎりなく重ねた結果として金メダルを獲得したことも「沙裡淘金」といえるのでしょう。
 
  • 2016年01月27日(水)
  • 鉱物

「掌上明珠」(しょうじょうめいじゅ)

 手中に収めて掌の上にある美しい明珠・珍珠すなわち「掌上明珠」(『元遺山詩集箋注「一二」』など)といえば、男性ならば最愛の女性のことを、父や母ならば寵愛する子女とくに女の子を指します。女の子が生まれたことをよろこんで「明珠入掌」(郭応祥「鷓鴣天」など)といいます。略した「掌中之珠(玉)」はよく使う親しいいい方です。求めて得た珍珠だったのに失ってしまうことの悲哀の例も多くあって、「掌中明珠去る」(辛棄疾「永遇楽」)や「掌中の珠砕ける」(庾信「傷心賦」)という表現も知られます。

掌中にできない明珠としては美しい夜のまちが例えられ、「東方明珠」といえば上海の呼称です。浦東地区に建てられたテレビ塔が「東方明珠電視塔」(四六八メートル)で、上海の観光スポットになっています。白居易の「大珠小珠玉盤に落つ」(「琵琶行」)から想を得て大小11個の明珠を連ねて設計されています。

  • 2015年06月17日(水)
  • 鉱物

「破鏡重圓」(はきょうじゅうえん)

 仲のよかったご夫妻が故あって離散したり決別したのち、ふたたびまるく納まってめでたしめでたしというのが「破鏡重圓」(棨『本事詩「情感」』から)です。

時折り話題になりますが、典故になっている徐徳言と楽昌公主(南朝陳国皇帝の娘)の場合は故あって離散した例です。隋が遠征して南朝陳を滅ぼした際に、皇帝舎人であった徐徳言は、妻の楽昌公主と離別せざるをえなくなります。そこで銅鏡を割って半分ずつを持つことにします。あなたは才色兼備だから遠征軍の隋の楊家に収まるでしょうから、来年の正月一五日に鏡を街なかで売ってほしい。わたしが生き延びていればその鏡から消息をえてあなたに会う機会ができる。楽昌公主はそうします。

街なかで半分の鏡をえた徐徳言は詩をつくる。「鏡与人倶去 鏡帰人不帰・・」。楊素は情愛の深いふたりに動かされ、故郷の江南の地にかえします。隋の楊素の「成人之美(人の美を成す)」を示す挿話として残された「破鏡重圓」のお話です。

  • 2014年11月26日(水)
  • 鉱物

「小家碧玉」(しょうかへきぎょく)

 碧玉は人名です。大家名門ではない普通の家の出の美貌の娘のことを「小家碧玉」(郭茂倩『楽府詩集「碧玉歌二」』など)といいます。「大家閨秀」(名門の娘)は、教育を受け、しつけを教えられ、しとやかで喜怒哀楽を表に出さず、おとなから称賛をうけ、仲間の評判もいい。一方の「小家碧玉」は、ことばづかいがかわいくて、性格は柔和で活発で、両目は輝いて喜びを露わにする。動作は楚々として男性に「護花」の気持ちを起こさせます。どちらも「時代の花」であることに違いはありません。
 例えとしては、アメリカ車やドイツ車が「大家閨秀」なのに対して、日本車が「小家碧玉」といわれます。実際にそういう宣伝をして売っています。ケイタイなら仔細な用途を巧みに埋め込んだものに。お寿司の盛り合わせや念を入れて醸造したお酒も。さらには丁寧に手入れされている庭のたたずまいもそのひとつ。最近はやりの内輪でコンパクトな結婚式にもいわれますが、やはり花束を抱えた「小家碧玉」が主役です。
  • 2014年05月14日(水)
  • 鉱物

「一盤散沙」(いちばんさんさ)

 大皿の上に散らした砂のように、ばらばらで、力量が分散されて活かされていないことを「一盤散沙」(孫中山『建国方略』など)といいます。孫文は四万万(四億)の民衆は一盤散沙に等しい」といって、「天下為公」を唱えて民族的結集を呼びかけたのでした。
 国家となると大盤でしょうが、小ぶりな盤はさまざまあります。そのひとつがサッカー場です。広州でおこなわれたAFCアジア・チャンピオンズ・リーグで、広州恒大が横浜F・マリノスを2−1で破ったとき、「今日は一盤散沙でなかった」というコメントが出ました。ということは横浜のほうが「一盤散沙」だったということになります。中国スポーツ界では陸上の花である女子中・長距離界の選手育成が遅れて不振つづきで、「一盤散沙」がいわれます。

 衆・参両院選挙後のわが国の野党のありようが、この「一盤散沙」といわれる状態にあるといわれると、与党独走の情勢の長いことが予測されます。

<< | 2/3PAGES | >>
webサイトはこちら

堀内正範氏

日本丈風の会 代表
Web月刊「丈風」編集人

当社が永く校正で携わった、『知恵蔵』(朝日新聞社)の元編集長、朝日新聞社社友。
現在は「日本長寿社会」を推進する「日本丈風の会」を主宰し、アクティブ・シニアを応援している。 中国研究を基にした四字熟語への造詣も深く、時事を切り口に、新聞や書籍において解説を行なっている。
日本丈風の会ホームページにて、「現代シニア用語事典」も掲載。

S M T W T F S
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930     
<< September 2019 >>