東京都新宿区の校正・校閲会社、円水社(えんすいしゃ)のブログ

  • 2016年03月16日(水)
  • 植物

「柳暗花明」(りゅうあんかめい)

 日本の春の花は淡いですが中国の春の花はどれも色濃くあざやかです。その中でもとくに桃は明るい。春の光をあびて柳の緑が陰をつくり、桃をはじめ百花がいっせいに開いて明るく輝いているようすが「柳暗花明」(王維「早朝」など)です。

唐の詩人王維は春の盛りを率直に詠じていますし、宋の陸游の「柳暗花明又一村」(陸游「游山西村」から)では桃の紅、柳の緑のあいだを詩人がゆったりと動くようすを伝えています。洛陽東郊の桃李(「年年歳歳」の花)もいいですが、南京の街なかの真っ赤な花桃並木も目を奪う風景です。ですから「柳暗花明春又来」は明るい展望を意味します。

また「柳暗花明」は、比喩的には逆境の中で急に転機がおとずれて希望が持てる状況になることにいいます。いい結果をさがしている原油価格、株式市場、ワイン輸入、シャープ(夏普)、二児対策などさまざまあってよく用いられます。

  • 2015年09月16日(水)
  • 植物

「十歩芳草」(じゅっぽほうそう)

「十歩のうちに芳草(賢才)が見出せる」ということ。十歩のうちですから身の周り、見渡すほどの範囲の処々に賢才がいるということ。賢才は日月を継いで決して絶えることがないという意識もあるようです。その比喩として芳草、香草、茂草などの違いはあっても、後代の典故には『論語』にみえる孔子のことば「十室之邑、必有忠信」(「公冶長」から)が同時に意識されているようです。

漢の劉向『説苑「談叢」』には「十歩之澤、必有香草、十室之邑、必有忠士」とあり、『隋書「煬帝紀三」』には「十歩之内、必有芳草」と出てきます。

「芳草」については、「桃源郷」(陶淵明『桃花源記』)の桃花林に「芳草鮮美」とあって、まさに才媛を待つ風情です。いまやダイバーシティ(多様性)で、才女・才媛が求められる時代、「芳草」を才媛と読めば、「十歩芳草」はその登場を呼かけるにほどよい「四字熟語」といえそうです。

  • 2015年08月12日(水)
  • 植物

「樹大招風」(じゅだいしょうふう)

 真夏の東京・日比谷公園の大樹の下のベンチで、読みさしの本を膝にうたたねをする人がいます。大樹の蔭は風も通って蝉鳴すら涼しそうです。霞が関の官庁では冷房の効いた部屋でクールビズ姿の官僚が、国会での「安保法制」の議論を聞いているにちがいありません。平和な夏の情景です。

樹は大きくなれば風を招く「樹大招風」(『西遊記「三三回」』など)というのは、だれもが実見するおおらかな風景です。ところが、能力が目立ったり事業が順調に成長したりすると風あたりが強くなるという意味合いで用いられています。

中国の台頭は、軍事的にはアメリカの世界戦略に対抗する「中国脅威論」がいわれます。艦船発射型対空ミサイルや大陸間弾道ミサイルの展開や衛星「北斗」の稼働、海洋進出は「樹大招風」として認識され、そのはざまでアメリカの戦略に加担するのが「安保法制」です。樹下に憩う国民の安心を担保できるのでしょうか。

  • 2015年07月15日(水)
  • 植物

「出類抜萃」(しゅつるいばっすい)

類から出る、あるいは萃から抜けるというのが「出類抜萃」(『孟子「公孫丑章句」』など)で、「萃」には草が集まる(くさむら)という意がありますから「抜粋」と記すと実景への誤解を生じます。

書物の中から優れた部分を抜き出すことに「抜萃」はよく使われています。人物なら衆人から品格や才能が抜きん出ていることに。孟子は孔子がとくに秀れていることの表現としました。「三国志」では蜀の張松が魏の許都に出かけた折り、楊修に人物のことを問われて、「その類に出て、その萃を抜く者は記すにたえず、数え尽くす能わず」(『三国演義「六〇回」』から)と誇る場面があります。

ニコン(尼康)のカメラやソニー(索尼)のデジカメやトヨタ(豊田)車の「出類抜萃」の機能の紹介や宣伝とともに、村上春樹の短編集『女のいない男たち』没有女人的男人们)が「出類抜萃」ではないという批評に出くわしたりもします。


  • 2015年05月20日(水)
  • 植物

「良禽択木」(りょうきんたくぼく)

 トリは良い木を択んで住みつき巣をいとなみますが、ここは良いトリは木を択ぶ「良禽択木」(『三国演義「一四」』など)ということで、賢能な人物は英明な君主を択んでつかえて大業をなすという意味合いで用いられています。後漢の創成期に光武帝劉秀につかえて名将として活躍した馬援は、「君が臣を択ぶ世ではありません、臣もまた君を択ぶ世なのです」といって逆指名して木を択んでいます。

木の側からは、優れた人材を得たい企業が人材を確保するにあたって良木であることを広報するときや不動産の広告にも見られます。このトリと木の関係は、名実ともにそなわったサッカー選手の移籍がわかりやすい例でしょう

これから求められる「良禽」としての条件というのは、マネジメント能力、外国語でのコミュニケーション能力、専門分野でのプロフェショナル能力だといいます。この国で、奇に出て笑いをとるエンタメ能力が優先するのとは異なるようです。

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堀内正範氏

日本丈風の会 代表
Web月刊「丈風」編集人

当社が永く校正で携わった、『知恵蔵』(朝日新聞社)の元編集長、朝日新聞社社友。
現在は「日本長寿社会」を推進する「日本丈風の会」を主宰し、アクティブ・シニアを応援している。 中国研究を基にした四字熟語への造詣も深く、時事を切り口に、新聞や書籍において解説を行なっている。
日本丈風の会ホームページにて、「現代シニア用語事典」も掲載。

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