東京都新宿区の校正・校閲会社、円水社(えんすいしゃ)のブログ

  • 2020年03月18日(水)
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「重見天日」(ちょうけんてんじつ)

 困難な状況を脱してふたたび光明を見出すことが「重見天日」(『三国演義「二八回」』など)です。いまこういえば、「新型コロナウイルス(円冠病毒)」の発現地になった武漢市が思われます。習近平主席も激励にいき、マスク姿で「保衛戦」を戦う市民に感謝を伝えていました。武漢の勝は湖北の勝、湖北の勝が全中国の勝として。
『三国演義』では、盗賊に身を落としていた周倉が関羽の五関突破の道で将軍関羽に出くわす場面で吐出されています。会いがたき人と巡り合えた喜びを表現することばです。必ずといっていいほど用いられているのが陵墓や大仏(蒙山)といった考古学的大発見についてです。もっと身近なお宝の発見もありますし、車庫に眠っていた1988年製の白色のマツダ(馬自達)RX−7を発見した車マニアが「重見天日」と叫んでいます。
 武漢大学の「桜大道」の桜が満開になっています。だれも訪れる人のいない構内でひっそりとではなく、いつものように華やいで。天恵と天災は人智を超えてやってきます。

  • 2020年03月11日(水)
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「解衣推食」(かいいすいしょく)

「衣食足りて礼節(栄辱)を知る」(『管子「牧民」』から)といわれますが、どうでしょうか。衣食足りているはずのこの国で、新型コロナウイルス騒動でのカイダメ姿をみると疑わしくなります。自分が着ている衣を解いて与え、自分の食を分けて与えてわが身を削ってもてなして命に替える信を得るのが「解衣推食」(『史記「淮陰侯列伝」』から)です。
 天下を東(項羽)と西(劉邦)に二分したとき、項羽は韓信の説得に旧知の武渉を向かわせます。項羽に仕えたこともある韓信に武渉は、「あなたが右に投ずれば漢王(劉邦)が勝ち、左に投ずれば項王が勝ちます。あなたは項王と故あり」と説きます。韓信は「漢王は衣を解いてわれに衣(き)せ、食を推してわれに食らわせてくれ」、その上よく言を聴いてくれて計は用いられたと答え、「死すとも易えず」として断っています。
 命にかかわる食と信。国際協調から分断への時代に、食材は世界各地からやってきます。わが国が信頼を得て食を得られるかどうか、礼節が問われることになります。

  • 2020年03月04日(水)
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「白駒空谷」(はっくくうこく)

「白駒」は白色の駿馬。賢能者の例えです。賢能な人が在野にあって出仕しないことを「白駒空谷」(『詩経「小雅・白駒」』から)といいます。避けて出仕しない場合や出仕しても志をえない処遇に終わることをいいます。「空谷」は人気のない谷間で、そんな孤立した状態でいるときの人の気配「跫音空谷」は、自分の意見に賛同してくれる人を得たときなどに用いられます。「白駒」にはよく知られた「白駒過隙」があって、白馬が細い隙間を駆け抜けるようすで瞬時のことを指します。これは人生の短さに例えられます。
 本稿のここでの「白駒」は、長い現役の期間に努めて培った知識や熟練技術を保っている賢能な人びとのこと。ですから「白駒空谷」はそういうさまざまな経験のある人びとが、場をえずに潜在能力を発揮できずに地域で有閑安逸な日々を送っているようすの例えとしています。「生涯現役」といわれても実感をもてず、といって潜んで静寂な山谷に暮らす「隠退余生」(隠居)にも収まりきれない日々を迎えては送っているのです。

  • 2020年02月26日(水)
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「風月同天」(ふうげつどうてん)

「山川異域,風月同天」(『全唐詩「巻732長屋」』から)という8字の詩句が、新型コロナウイルス(新型冠状病毒)感染の渦中にある中国のネット上で話題になっています。というより政府にできない民衆救済の役目を果たしています。風土は異なっても見上げる中天の月への有情は同じであるというもので、日本をはじめ防疫物資を送ってくれる異域の国々が世界に広がって、中国の民衆は襲来した「病毒」の封じ込めを、命運を共にする人類の闘いであるという意味で支援する側と心情を共有しているのです。

 この8字は平安時代に仏教移入をめざした長屋王が遣唐使に託した1000枚の袈裟に「山川異域 風月同天 寄諸仏子 共結来縁」と刺繍させたもの。1300年前に鑑真はこれをみて仏縁を感じ渡航を決した(『唐大和上東征伝』から)といいます。今回、日本青少年育成協会が湖北高校などに送った物資の箱に記したもので、「風月同天」は民衆の熱い理解で世界は一つというメッセージの四字熟語になったといえるでしょう。

  • 2020年02月19日(水)
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「春夢無痕」(しゅんむむこん)

 新型コロナウイルス(新型冠状病毒)に襲われた中国では今年の春節(1月25日)は祝っていられませんでした。わが国でも天皇誕生日の一般参賀が中止され、東京マラソンも一般参加者が走れなくなりました。春節を迎えて「春回大地」とはいえまだ凍てつく日がつづきますが、元宵節(最初の満月)を終えると次第に春めいてきて、「春暖花香」の季節がやってきます。桜の花見は中国にもあって、武漢大学キャンパス内の500mほどの桜花大道が有名です。入場料は大学の収入源になっています。
「春の夢」というのはもろくてはかなく、容易に消え去ってしまい痕跡を留めない、ということで「春夢無痕」(蘇軾「正月二十日与潘郭二生出郊尋春」から)がいわれます。蘇軾には有名な七言絶句「春夜」があって、「春宵一刻」値千金・・夜沈沈と詠っています。
 春の夜の夢については、わが『平家物語』の巻頭にも「・・おごれる人も久しからず、 ただ春の夜の夢のごとし」とあって、平家のつかの間の栄華が例えられています。

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堀内正範氏

日本丈風の会 代表
Web月刊「丈風」編集人

当社が永く校正で携わった、『知恵蔵』(朝日新聞社)の元編集長、朝日新聞社社友。
現在は「日本長寿社会」を推進する「日本丈風の会」を主宰し、アクティブ・シニアを応援している。 中国研究を基にした四字熟語への造詣も深く、時事を切り口に、新聞や書籍において解説を行なっている。
日本丈風の会ホームページにて、「現代シニア用語事典」も掲載。

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